自己責任

今週末からアンマンに行き、可能ならばイラク入国を考えている私にとっては、「自己責任」の検証は避けて通れない課題である。
私は昨年4月3日にアンマンに到着し、通訳のハリルの家で一泊。寝た瞬間、つまり4日の未明、ハリルにたたき起こされた。アル・アラビアテレビを見ると、アメリカとサドルシティーのムクタダ・サドルの軍隊が銃撃戦を始めている。その時点で「米兵が7人死亡」と出ていた。「ニシ、やばい事態になった。今すぐ出発しなければ国境が封鎖されるかもしれない」というハリルの意見。慌てて身支度し、ハリルの妻にサンドイッチを作ってもらい、すぐに出発したことが昨日のことのように思い出される。
ハリルは夜の国道を150キロ以上で素っ飛ばし、イラク・ヨルダン国境に到着したのが朝6時。国境は長蛇の列だった。日本からの医療器具を車に積んでいて、ハリルは「人道支援だ、緊急支援だ」と主張し、長蛇の列をごぼう抜き、わずか1時間で国境を越え、またしても国道(アリババ街道と呼ばれている)を素っ飛ばすこと数時間。砂漠の中からユーフラテス川が現れ、ファルージャに到着した。
国道を米軍戦車が封鎖している。戦車の横には後ろ手に縄でくくられたイラク人が3人。「捕まったな、あいつらはアブグレイブ刑務所行きだ」とハリル。ファルージャの「抵抗市民」だった。
国道が封鎖されているので、回り道をたどりながらバグダッドを目指す。道路沿いにガソリンスタンド。
私たち2人は国境で給油し、一目散にバグダッドを目指したのだが、その3日後、高遠さんたちは、このガソリンスタンドに立ち寄ったことで、悲劇に巻き込まれる。
「紙一重の差」なのだ、私とあの3人は。もし私が「人質第一号」だったとしよう。私の場合は、当時「地方公務員」である。家族や実家のもとにマスコミが張り付き、「無謀だ」「税金ドロボー」「こいつは共産党だ」「公務員がなんでイラクに行くのだ」などの悪罵が投げつけられていただろうし、当時中学3年生の娘などは、学校に行けたかどうか・・・。
あの時マスコミは、高遠さんが高校時代喫煙していたことを報じた。郡山さんは離婚していた、今井君は両親が共産党員だ、など面白おかしく報じながら、いかにこの3人が「ダメなヤツ」かということを政府と一体となって攻撃していたのだ。
私など、もっとも「攻撃の対象に格好の材料」ではないか。大阪市ではないけれど、厚遇されて、ロクに働かず、休暇をとって、(税金で)イラクにいった無謀なヤツ・・・。
高遠さんが、イラクのストリートチルドレンを支援してきたことや、今井君が劣化ウラン弾の被害の実態を調べに来たこと、郡山さんが戦場の子どもたちの実体を伝えるフリージャーナリストであること、そういった「事実」はかき消され、「迷惑なんだよな」という洪水のような報道の中で、彼らは好奇の目にさらされ続けた。小泉政権のメディア支配によって、「悪罵を投げつけられ続けた」3人に対して、アメリカのパウエル国務長官(当時)が、「日本にも勇敢な若者がいる」という発言がなければ、この日本のメディアは、水に落ちた犬をさらに痛めつけるように、「自己責任論」を続けていただろう。
そもそも「自己責任」って何だ?イラクに入国しようとする私にも自己責任は当然ある。捕まって高額な身代金を要求され、それが政府によって支払われたとするなら、それは「迷惑をかけた」ことになるだろう。
しかし、人には「旅行の自由」「取材の自由」「表現の自由」がある。戦争被害の実態を伝える人がいなかったら、イラク戦争の悲惨さを伝えるジャーナリストが、現地に入らなかったら、自衛隊の派兵が良かったのか、悪かったのか、検証できないではないか。
高遠さんらが拘束されたとき、米軍はファルージャで700人もの人々を虐殺していた。この「700人を虐殺した」というニュースが、日本のメディアでどれほど報道されていただろうか?3人の自己責任の報道時間を10とすると、「ブッシュが700人を殺した」と伝えた報道時間は、おそらく1もなかったのではないか。
700人を殺した責任者、ブッシュと、「危険なところに行って捕まった無謀なヤツら」との自己責任の比較は行われたであろうか?殺人という一番重い罪を、なぜメディアは追求しなかったのか?
「自己責任」を語るとき、どうしても熱くなる。明日は「自己責任2」で、肝心の小泉首相の「自己責任」を追及したい。

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このページは、nishitaniが2005年11月14日 12:38に書いたブログ記事です。

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