自己責任2

4月8日、通訳ワリードが私の部屋に飛び込んできた。「大変だ、日本人が誘拐されたぞ」。ファルージャを通過する際に、武装勢力に拘束され、「3日以内の自衛隊撤退」を要求しているという。とたんに私の衛星携帯電話が鳴り出した。「OO新聞ですが・・・」「××テレビの・・・」 メディアが聞きたがったのは、「バグダッド市民はどのような反応か?」「そちらは危険なのか?」「どのようにして帰国するつもりなのか?」などであった。朝日、毎日、大阪日日などは、自衛隊のことについても質問していた。
ワリードとバグダッドの町へ繰り出し、緊急市民インタビューを行った。大きなビデオカメラを向けてインタビューしていると、「ナンダナンダ」と大勢の人々が集まってくるので、一回のインタビューで、数人に聞く事ができて効率的だった。多くの人々が「3人を誘拐するべきでない。彼らは軍隊ではない」という反応だった。あの時点で、概ね人々は「好意的」だったが、中には「自衛隊を派兵するからだ。日本は敵になったのだ」とまくし立てるおじさんもいた。
その夜、ホテルのロビーでワリード、ハリルらとテレビを見ていた。3人が目隠しをされて、「ノーコイズミ」と叫んでいるシーンが流れた後、日本人のデモ行進が流された。「自衛隊を撤退させよ」「3人の命を救え」という、自然発生的なデモ行進だった。中にはブッシュの面をつけたおじさんが、犬を連れていて、その犬に小泉首相の面をつけさせていた。これはイラク人にも大うけだった。
「こんなにたくさんの人がイラク戦争に反対してくれているじゃないか。日本人を見直したぞ」と私に語りかけてくれる人もいた。そして3日があっという間に過ぎ去った。
「解放するらしいぞ」。ホテルのロビーでテレビを見ていたワリードが教えてくれた。やった!良かった・・・正直安堵した。武装勢力側の「声明文」によれば、「多くの日本人が自衛隊撤退を求めてデモをしてくれた。その日本人たちに免じて解放する」となっている。
テレビに小泉首相が現れた。緊急記者会見だ。「解放してくれて感謝する」などと言うのかと思っていたら、「彼らはテロリストだ。日本はテロには屈しない。自衛隊は撤退させない」と言い切った。アラビア語に変換された小泉首相のコメントを、ワリードが英訳してくれる。訳してからワリードは激怒した。
「こいつは馬鹿か!テロリストなどと言えば、彼らレジスタンスは怒ってしまうよ。もしかしたら解放されないかもしれない」。現地では誘拐した側、つまりファルージャの「武装勢力」のことを、誰もテロリストとは呼んでいなかった。通常彼らは「レジスタンス」と呼ばれていた。あるいは「ゲリラ」だ。テロリストはアルカイダなどの犯罪者集団を指す。ファルージャの人々は、大虐殺に抗議して立ち上がった人々であるから、当然、レジスタンスと呼称されなければならない。
それを一国の首相が解放声明が出たその日の朝に、「テロリスト」と決めつけ、「自衛隊は撤退させない」と言い切ったのだ。身柄はまだレジスタンス側にあるのに・・・。
事態はワリードの予想通りとなった。3人の身柄は解放されず延期された。彼らが解放されたのは4月14日、4日もずれたのは、小泉首相の「無責任発言」があったからだと思う。3人の自己責任を追及したマスメディアは、小泉首相の自己責任は追及しなかった。

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このページは、nishitaniが2005年11月15日 12:39に書いたブログ記事です。

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