トルコ風呂

一昔前なら、人々はこの表題を見て驚くか、ニヤつくか、眉をひそめたことであろう。昨夜、私はアンマンの繁華街にある「ターキーバス」、つまり「正式な」トルコ風呂を経験した。受け付けで「入浴料」を支払い、服を脱いで「マッサージルーム」へ行くと、フィリピンからの出稼ぎ女性が入念に全身をマッサージしてくれる。フィリピン女性が全身マッサージ、と聞くだけで世の男性諸兄は「ムフフ」状態であろう。しかし繰り返し言うが、ここは「正式な」トルコ風呂である。足裏や首のツボ、背中や肩のマッサージで、驚くほどに肩のこりがスッキリ。
マッサージ嬢はフィリッピン出身なので英語OK。いわゆる世間話で生い立ちを聞くと、彼女は9人兄弟の6番目で、5年前からヨルダンに出稼ぎに来ている。フィリッピンでは裕福な家庭のメイドをしていた。単身でアンマンに来たときは、本当に心細かったという。朝10時から夜11時まで働いていて、マッサージ嬢は全てフィリピーナ。この5年間で故郷に帰れたのは1回だけで、休日もろくにもらえないため、ボーイフレンドもおらず、32歳になった今も独身だ。
中東ではこのようなフィリピンや中国、インド、バングラディシュなどからの出稼ぎ者が多い。フィリピン、インドは英語をしゃべるので、仕事をするにもアドバンテージがあるのだろう。
「トルコ風呂」に入浴したのは、通訳のハリルと、ファルージャから逃げてきた建設会社社長のザキー、そして私の3人。ザキーはイラクの富裕層で、お金を持っているがゆえに、身代金目的で、昨年長男を失った。
貧しいがゆえにフィリッピンから出稼ぎに来ているマッサージ嬢が、戦争のために息子を失った社長の肩をもんでいる。
さてどちらが幸福なのだろうか?誰が幸せで誰が不幸せなんて、他人が計れるはずがないが、憲法9条に守られ、戦後の高度成長の中、平和と豊かさの中でに暮らすことのできた私が、一番苦労知らずに育ってきたことだけは確かなようだ。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: トルコ風呂

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.nowiraq.com/mt/mt-tb.cgi/129

コメントする

このブログ記事について

このページは、nishitaniが2005年11月23日 12:46に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「アンマンへ避難してきたイラク人は語る」です。

次のブログ記事は「アンマンの自爆テロ続報&ベイルートより」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.01