ツワイサ

みなさん明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。新年早々「重い話題」で恐縮ですが、今年は「ツワイサ」から始めます。

バグダッド南方、30キロほどのところにツワイサ核施設がある。湾岸戦争後、ツワイサは国連安保理の管理となったが、今回のイラク戦争後の混乱の中で、徹底的に荒らされ、厳重に保管すべきウラン物質が、川に流されてしまった。占領軍であるアメリカは、「わざと」混乱に拍車をかけたようで、人々が暴徒化し、銀行やメソポタミア遺跡などを荒らしまわった時、厳重に警備するどころか、「自由に取れ」と警備せずに「開放」したようだ。
つまりアメリカ軍が「きちんと占領」しておれば、ツワイサの悲劇は防げたはずだ。(複数のバグダッド在住のイラク人の証言による)以下は毎日新聞に書いたものである。

バグダッドの南方、車で1時間くらい走ったところに「ツワイサ核施設」がある。1980年代、独裁者フセインはここで核兵器を作ろうとしていた。イランイラク戦争のさなか、「親米」のフセインにアメリカ、フランスなど西側諸国からさまざまな武器が流れ込み、イラクの軍事力が急速に増強されていく。「イラクが核を持つかもしれない」とあせったイスラエルは、このツワイサ核施設を爆撃した。1981年のことだ。やがてフセインは「クゥエート侵略」という暴走を始める。この時点でフセインは「悪の枢軸」に祭り上げられ、世界は湾岸戦争に突入。湾岸戦争後、ツワイサは国連安保理の管理下におかれる。施設内にはいくつもの監視カメラがあり、警備は厳重。その映像は瞬時にニューヨークの国連本部へ送られていた。
そんな「最重要警備施設」であったツワイサが、今回のイラク戦争でめちゃくちゃに荒らされる。2003年4月9日〜11日、フセイン体制の崩壊で、イラク全土が「無法地帯」になる。ツワイサに盗賊団が忍び込み、ウランの粉が一杯詰まったコンテナーをひっくり返していく。イエローケーキと呼ばれるウランの塊は、ツワイサに流れるディヤル川に捨てられた。そしてこのディヤル川はチグリスの大河につながっている…。
写真の赤ちゃんは、2年前にツワイサを訪れた時に撮影したもの。背中に大きな腫瘍を持って生まれてきたこの赤ちゃんは、生後ずっと泣き続け、一度も仰向けになって眠ることなく、わずか5ヶ月でその生涯を閉じた。
アンマンに逃げてきたがん治療の専門医師に、最近のツワイサのことを尋ねた。彼はイラク新政府に無断でイラクを脱出してきたため、写真による顔出しはNGだが、証言を新聞に掲載することは許可してくれた。
「ツワイサは最悪の状態だ。周辺の村は、いまだにディヤル川からの水を飲んでいる。家畜の牛や羊に奇形が現れている。この写真のような子どももたくさん生まれている。私たちが治療に当たってきたが、抗がん剤の不足で、バタバタと死んでいるのが現状だ。周囲の村は貧しくて、引越しすることもできず、きれいな水も配給されていない。ウランは確実に人体に蓄積されている。14歳までの子どもが特に危ない。イラクから連れ出すことができれば治療は可能だ」。
本来なら一刻も早く、国連の調査団を派遣し、NGOなどが人道支援をしなければならないのだが、ツワイサには国連も、支援団体も入ることができない。なぜか?
アメリカは劣化ウラン弾を使用したことは認めているが、このような環境破壊があったことは認めていない。もしイラク全土が戦争によって取り返しのつかないような被害が出ていることがばれてしまえば、アメリカにとって都合が悪い。さらに今のイラク政府はアメリカの言いなり。かくしてイラクの子どもたちに抗がん剤は届かない。アンマンから薬を送っても途中で没収されてしまう。イラク政府の役人の懐に入って、ブラックマーケットに流されるのがオチだ、という。それで今回の支援は「食用油」にした。今不足しているのが「水、電気、米、砂糖、油」だというのだ。これから寒い冬を迎えるので、油は食用にも暖房にも使えるだろう。アンマンからトラック4台でバグダッドへ運んでもらうことにした。途中の「アリババ街道」が非常に危険なので、運転手たちには十分注意するようにお願いした。「イラクの子どもを救う会」へ募金いただいたみなさん、紙面を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

で、今のツワイサの状況を知りたいのだが、ツワイサ周辺は今や最も危険な地域の一つ。なかなか取材に入れる環境ではない。村人たちにどのような被害が出ているのだろうか?放射線はどれくらいのレベルなのか?デイヤル、チグリス川の汚染状況は?人々、特に14歳までの子どもにどのような症状が出ているか?こうしたことを調べて映像に残すべきだと思うが、果たしていつになれば入国できて、ツワイサに入れるのだろうか?こうしたことこそドキュメンタリー番組にして、広く知らせるべきだと思うのだが…。

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このページは、nishitaniが2006年1月 3日 11:58に書いたブログ記事です。

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