亀も空を飛ぶ

昨年末、「亀も空を飛ぶ」という映画を見た。不覚にも涙が出て止まらなかった。舞台はイラク北部、クルド人たちの村。クルド族は自分の国を持たない「世界最大の少数民族」で、トルコ、イラク、イランなどから、それぞれ迫害されてきた歴史を持つ。近年、おそらく最も激しかった弾圧は、フセインの「アンファル作戦」であろう。
イラン・イラク戦争の末期、イラン側に付いたクルド人たちを、フセインは徹底的に弾圧・虐殺した。もっとも有名なのが「ハラブジャ」で、サリン、マスタードなどの毒ガスで村ごと壊滅させた。
「亀も空を飛ぶ」の主人公は、そのハラブジャ出身の子どもだ。兄は両手を失い、美しい妹にはなぜか暗い影がある。そしてその妹が背中に背負う乳児は下の弟・・・。
詳細を書いてしまうと、映画を未見の方に悪いので、このあたりで止めておくが、私には2年前に訪れたハラブジャの人々の姿がダブって見えて、涙が出て止まらなかったのだ。
以下は、ハラブジャで行ったインタビューである。
「10人家族でたった一人生き残ったアブドル・カーメルさんを訪ねる。カーメルさんは当時15歳、人生で最も元気なときだった。「もっと新鮮な空気がほしい」とカーメルさんは言う。豊かな森に囲まれたハラブジャ。空気は日本よりずっと澄んでいるのだが、サリンを吸い込んだ肺には、時おり家の前を通るトラックからの排ガスも結構なダメージだ。6人の姉、1人の兄、そして両親を一瞬にして失ったカーメルさんは、6日がかりで山を越え、イランへ逃げた。カーメルさんの背中にはいまだに斑点が残っている。1日3回の薬は欠かせず、体力を消耗するので、まともな仕事にも就けない。「『ハラブジャから300キロ離れた村から、健康な女性を』という要望で、今の妻を迎えました。私とハラブジャの女性が結婚したら、子どもは奇形児になると思ったのです。2人息子が生まれましたが、1人目は死産でした。頭が半分なかったのです。何で私だけが生き残ったのでしょうか?きっと神が生き証人を必要としたからでしょうね」。カーメルさんの手の中で息子がむずがって泣き出した。細い細い糸でつながった、カーメルさんの血筋。こんな田舎町の片隅にも、戦争被害者がひっそりと生きている。」
映画に登場した「下の弟」は、目が見えなかった。毒ガスの影響なのだろうか?
現在「亀も空を飛ぶ」の上映は終了したようだ。ビデオかDVDになればぜひ。

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このページは、nishitaniが2006年1月13日 12:02に書いたブログ記事です。

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