北朝鮮のミサイルと経済制裁、そして日米同盟

北朝鮮がテポドンを含むミサイルを発射し、日本は大騒ぎである。もちろん、このような無法を許すわけには行かないし、一歩間違えれば大惨事を引き起こすわけであるから、北朝鮮に対し、厳重な抗議と、以後このような「戦争行為」を行わないように約束させることが重要だと思う。
その上で、「なぜ北朝鮮がこの時期に全世界を敵にまわすような行動をしたのか」について慎重に考える必要があると感じる。大事なことは、「危ない」「何をするかわからない国だ」と、政府やメディアが騒ぎ、一種の集団催眠のような状態になって、一気に「憲法改悪、軍備拡張モード」、つまり小泉首相がよく言う「備えあれば憂いなし」にさせてはいけない、ということだ。
例えば、今盛んにテレビで騒いでいるのは「経済制裁せよ」である。
私は「経済制裁が成功した例はない」と反論したい。食料や燃料をストップさせても、国民は餓死するだろうが、金正日将軍は余裕の生活を続けるだろう。金正日将軍だけにピンポイントで「経済制裁」ができればやる意味があるが、実際にはそんなことは無理であるから、金正日将軍と、軍部、朝鮮労働党幹部は、今までどおり優雅な生活を続け、国民は塗炭の苦しみを強いられるだろう。
ジャーナリスト萩原遼氏によれば、「金正日は飢餓を、自分の独裁維持に利用した」とのことだ。つまり90年代半ばに北朝鮮が大洪水に見舞われた際、朝鮮北東部の反金正日の地域には国際支援物資を流通させないようにして、わざと食糧危機に追い込み、反将軍様の抵抗運動を、「根絶やし」にすることで独裁を維持してきた、との分析だ。
この分析は、おそらくはずれていない。ピョンヤンの映像がしばしば流れるが、ピョンヤン市民は飢えていない。つまりピョンヤンという首都は、将軍様に反旗を翻すグループはおらず、食料その他日常品は流通するようになっているのだと思う。将軍様が恐れているのは、将軍様の目が届きにくい地方の組織が「パルチザン的に」決起し、それが燎原の火のように広がって、ピョンヤンに伝染していく、ことではないか。
ルーマニアのチャウシェスクは、首都ではなく、地方都市からの反乱でやられてしまった。
もし今回の事件をキッカケに安易に経済制裁に走ると、経済制裁を口実に、金正日は自分に対する国民の怒りを、アメリカ、日本に向けることによって、さらに独裁を維持できるというシステムが出来上がってしまう。
イラクでもそうだったが、湾岸戦争後の経済制裁でフセインは倒れなかった。それどころか民衆は打倒アメリカ、フセイン支持に振れた。食料が来ないので、多くの子どもが死んでしまっただけに終わったのだ。
なぜこの時期に、北は「愚行」を敢行したのか?
アメリカがそうさせるように持って行ったのではないのか?
少なくとも、ミサイル防衛システムは、今後急速に進んでいくだろう。アメリカ方式だと10兆円産業。日本でも1兆円の予算で、「飛んできたミサイルを、ミサイルで打ち落とす」という曲芸のようなシステムに、多くの血税がつぎ込まれていくのだ。
レイセオン、ボーイング、三菱などは笑いが止まらないのではないか。国家予算が赤字に瀕している今、何兆円という仕事を受注できる。
自民党もニンマリだろう。米軍基地再編に3兆円もの税金を使い、あげく、そうした予算を消費税10%でまかなうべし、と考えている、小泉首相と、安部官房長官あたりは、「これで米軍基地再編も国民に納得させることができる」し、「自衛隊を自衛軍に」という世論形成も可能だ、と。
「プレスリー訪問」で世界中に失笑を買った小泉訪米であったが、その中で「新世紀の日米同盟」を宣言していた。「テロとの戦い」で明らかなように、アメリカは常に「仮想敵国」を求めている。日本はアジアでのパートナーとして「同盟軍」に育ってもらわねばならないので、北朝鮮はうってつけの「戦いに備える相手」ではないか。
憲法9条を変える準備が着々と進んでいるように感じる。憲法は国民投票を経ないと変えられないので、日本がその国民投票に臨む際に、また北朝鮮がなにやらやらかすのではないか。
私には金正日という独裁者が「軍備拡張というボール」をセンタリングし、アメリカと日本が共同して、「戦争」というゴールにボールを蹴りこんでいく、そんな構図に見えてならないのだ。

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このページは、nishitaniが2006年7月 6日 11:17に書いたブログ記事です。

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