バグダッドより速報 その2

バグダッドのPUK本部で、幹部職員にインタビュー。バグダッドの治安は安定に向かっているものの、まだ外国人にとっては危険な状況。ちなみに、ファルージャやラマーディーには、かなりの注意が必要で、「行かないほうがいい」と忠告を受けたが、イラク南部、すなわちサマワやバスラには訪問可能とのこと。今回は日程が詰まっているので、サマワにはいけないが、次回は行けそうだ。

幹部インタビューを続けていると、ハッサンアボッドがやってきた。ハッサンとは携帯電話で連絡を取り合って、本日バグダッド入りすることを伝えてあった。ハッサンアボッドは、私の通訳であり、友人。大阪に3回招待し、そのうち2回は裁判で法廷に立った。

彼は大阪の「イラク派兵差し止め訴訟」の原告なのだ。ハッサンは私の事務所に寝泊りした経験を持つ。そのハッサンとこうしてバグダッドで再会しているのが不思議だ。
みなさんご存知の通り、この「イラク派兵差し止め訴訟」は全国で行われて、名古屋高裁で「イラク派兵は9条1項違反」という画期的な判決が出た。ハッサンはこの裁判の貢献者である。
「ニシタニさん、良かったね。裁判で勝ったんだね」ハッサンも結果を聞いて喜んでいる。しばらくPUKのメンバーたちに私たちの関係を説明し、ハッサンとはここでお別れ。「ニシタニさん、気をつけて。決して無理してはいけないよ」。ハッサンも私の身の安全を心配してくれる。

PUKバグダッド本部を出て、ラシード通りの下町を行く。ラシード通りも壁で囲まれているが、商店街は普通に営業を続けている。その様子を車内から撮影していると、ピーッと笛が鳴り、警官が駆け寄ってくる。
「今、ビデオ撮影していただろ?」。しまった!見つかってしまった。こんなときは慌ててはいけない。「日本から来ている。『イラクの子どもを救う会』というNGOの者だ。悪気はない。軍や警察を撮影したのではない。ただ商店街の様子を撮っただけだ」。
私の身分証明書を見ながら、警官たちはなにやらアラビア語でしゃべっている。
「ここは撮影禁止だ。次回からは気をつけろ」と、「釈放」してくれた。下手をすればカメラ没収のところだった。危ない、危ない。

バグダッド・クルド人街の下町に、PUKの「母子センター」がある。
「日本人が来る」というので、多くの母子が集まっている。夫を殺された未亡人が多い。私が到着すると、「うちの子どもを見てくれ」「助けてくれ」と、ビデオカメラの前に母親たちが殺到してくる。
頭が膨れ上がった子どもがいる。3歳にして「水頭症」だ。母親は2回妊娠したが、上の子どもは死産だった。そしてこの子は生まれながらの「水頭症」。「劣化ウラン弾によるものとみて間違いないと思う」とは、PUKの女性スタッフ。

「俺の子どもの頭を見てくれ」と2人の兄弟を連れてきた父親。頭蓋骨の一部が削り取られていて、頭皮が露出している。指で触ると、そこは柔らかくて、脳内に指が入っていく感覚。米軍の空爆の破片が、頭蓋骨を削り取っていった。その結果、この男の子は普通に歩けなくなってしまった。歩行神経がやられてしまったのだ。不自由に歩く姿を撮影。本来なら傷ついた頭蓋をセラミックか何かで補強すべきなのだろうが、ここはバグダッドである。そんな手術は期待できない。空爆の際、一番恐ろしいのは、爆弾そのものより、周囲に飛び散る破片だ。目に当たれば失明するし、胸に当たれば死んでしまう。この子の場合は頭蓋をかすったのかもしれないが、若くして障害を抱えてしまった。
米軍がボタン一つで発射するミサイル。撃たれた側は生涯その痛みを引きずっていく。

ファラドーンが「この子どもたちに50ドルずつ援助しよう」と提案。急遽、名簿を作り、一家族ずつ50ドルを配っていく。
母子センターを後に、ホテルへと向かう。チグリス川沿いの「アル・マンスールホテル」。大通りから離れていて、チグリス川岸に建つ5つ星ホテルだ。ホテルに入るまでに入念なボディーチェックと荷物検査。外国人が宿泊するホテルは常に攻撃の対象となる。「日本人か!珍しいね」ホテルの警備員が驚いている。少しでもアラブ人に近づこうと、ひげを生やしていたが、やはり一目で分かるようだ(笑)。とにかく無事ホテルにチェックイン。さて明日はどうなるのだろうか?

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このページは、nishitaniが2008年10月16日 23:17に書いたブログ記事です。

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