バグダッドより 速報 ③

バグダッドで宿泊したのは「アル・マンスールホテル」。このホテルは大通りからかなり離れた場所に位置していて、ホテルに入るまでに、数箇所のチェックポイントを通らねばならない。ホテルの受付でオマールと初対面。

彼とはメールでやり取りしていて、バグダッドでの取材&セキュリティーを委託していた人物である。彼は2004年から、バグダッドで両親を失った子どもたちを支援するプロジェクトを開始している。そして彼は米軍の通訳として働いた経験を持つ。米軍にも顔が利くし、イラク市民の信頼もある程度集めている人物なのである。

バグダッドで「オマル」という名前を名乗るのは非常に危険なのだ。なぜなら「オマル」という名前は100%スンニ派で、IDカード(身分証明書)に「オマル」と書いてあるだけで、シーアの民兵に虐殺される可能性があるのだ。普通の「オマル」さんは、IDカードを偽装し、「アリー」や「ムハンマド」に名前を変えて、バグダッドの街で生活している。

「なぜ、オマルという名前で通しているの?」「確かにオマルを名乗るのは危険だ。しかし俺には、スンニ派、シーア派、米軍のネットワークがあって、それぞれが俺の事業を信頼してくれている。だから危険だけれど、殺されないと思って、オリジナルな名前を名乗っている」とのこと。

ホテルの部屋で、そんな話をしているときだった、突然、ドーンという爆発音。「まさか!やったのか!」とあわてて窓から外を見る。私の部屋はチグリス川に面した5階だったので遠くの景色まで一望できる。
ベランダに出てチグリス川対岸を見ると、モクモクと煙が上がっている。米軍ヘリが2機、慌てて旋回している。「あそこはパレスティナ通りだ。テロリストが爆破したようだ」とオマル。私たちのベランダに向かって米軍ヘリが飛んでくる。(ように見えた)「カメラを隠せ!やつらはレーザーで監視している。ビデオカメラで撮影しているのがばれたら、容赦なく撃ってくるぞ」。
まるで映画の一場面のような光景だが、バグダッドでは日常茶飯事。

「怖くないのかって?そりゃ怖いよ。でもどうすればいいんだい?俺たち市民はなすすべなく、見守るだけさ」とオマル。
翌日のニュースで知ったのだが、この爆発で27人の市民が殺された。犯人はまだ捕まっていない。バグダッドは約600万人の人口を抱える。毎日のようにこの手の爆発が繰り返されている。600万人分の27。大阪で例えるなら、今日は梅田で、明日は心斎橋、明後日は…。といった状況だ。人々は粛々と、その日の暮らしを終えていく。

誰がバグダッドをこのような街にしてしまったのか?
間違いなく米軍である。サダムを倒して、治安を改善させるべき米軍が、あえて人々を殺害して、激怒させ、そして無政府状態にしてしまった。一般市民からすれば、「いい迷惑」なのだろう。少なくともサダムの時代は、アルカイダはいなかった。スンニであるかシーアであるかで、人々は争うわなかった。「治安を守るために占領した」米軍の姿は、街のどこにも見えない。米軍は基地の中に閉じこもっている。街にでてくるのは監視用の飛行船と、テロ直後の偵察ヘリだけだ。

バグダッドを「殺人の街」にしたのは、間違いなく米軍だ。だれがこの責任を取るのだろうか…。


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このページは、nishitaniが2008年10月17日 05:42に書いたブログ記事です。

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