イラクディナールを使った詐欺が横行している

イラクの通貨ディナールを使った詐欺が横行しているのだそうだ。詐欺集団は、「世界的に注目されているイラクの通貨・イラクディナール」と題したきれいなパンフレットを使って、イラクディナール札を売り込んでいるのだ。

09年3月に私は12回目のイラクを訪れたが、その時のレートがだいたい1万ディナール=900円であった。イラクの通貨はイラン・イラク戦争、そして湾岸戦争をへて、ハイパーインフレとなり、ディナールの価値が急降下し、このようなレートになった。

しかしこれは戦争を経験した国家ではよくあることだ。私は96年、旧ユーゴのセルビアで「1億ディナール札」を見たことがある。確か価値は100円程度だった。最近ではジンバブエで「1兆円ジンバブエドル」などの通貨も出ている。戦争に敗れた国は、このように通貨崩壊することが多々ある。国が壊れるのであるから、通貨は信用をなくし、価値ある物、例えば米や小麦に人々は殺到する。1キロ1円であった米が、10円、100円、千円と値上がりしていったのが戦後の日本。で、値段は戻ったかというと戻らない。昔の1円が今の千円くらいの値打ちになったまま、経済は進展していく。

そう、貨幣の値打ちは「壊れる時は一気。そこで落ち着いたら、そのまま」なのである。イラクも通貨ディナールのレートが一気に下がったが、今は1万ディナール=900円のレートで落ち着いている。
詐欺師たちは「イラクには石油がある。治安が回復すれば、1万ディナールは元の価値、つまり数百倍の値打ちになる」と、ディナールを売り込んでいるのだ。

25000ディナール(約2千円弱)札を、何と10万円で売りつけた後、逃げているそうだ。ちなみにイラクディナールは、日本ではおそらくどの銀行も換金しないだろう。25000ディナールは、イラクに行けば2千円の価値があるが、日本では円に交換できないので、ただの紙切れ同然である。
このような詐欺に引っかかる人が後を絶たず、中には2千万円もだまし取られた人がいるという。

聞き捨てならないのは、詐欺師たちは「イラクディナールに投資することで、イラク経済を活性化し、ひいてはイラク戦争の被害者を救援することにつながる」とだましていることである。楽して儲けたいという、人の「スケベ心」と良心をくすぐる悪質な詐欺である。だまされた人の中には老人が多いと聞く。なけなしの貯金や年金を、紙切れ同然のディナール札に替えてしまい、呆然としている姿が目に浮かぶ。どうかだまされないでほしい。イラクディナールは、おそらくイラクが復興しようがしまいが、今後も1万ディナール=900円くらいで推移する。決して業者の口車には乗らないでほしい。

以上、この詐欺話は11月4日の朝日放送「ニュース・プラスゆう」で特集される。私はインタビューで思いっきり「だまされたらあかん。ディナールは値上がりしまへん。老後の資金はしっかり日本円で持っていてください」と訴えた。しかし、このような「幼稚な詐欺」に引っかかる人が多いというのは、株もダメ、年金も不安、老後の世話をしてくれる人もいない、自分で資産を管理しないと不安、という日本の状況を反映しているのだろうか。


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このページは、nishitaniが2010年10月27日 23:52に書いたブログ記事です。

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