芸能団 「イラクのヒロシマ」を訪問する

衣服を手渡す.JPG 写真は支援物資を手渡す鶴笑さん


12月5日、本日はフセインの毒ガス攻撃で一瞬にして5千人が虐殺された街、ハラブジャを訪問する。化学兵器、つまり毒ガスが撃ち込まれたのは1988年3月16日。ハラブジャでは毒ガスの後遺症に苦しむ人々が、いまだに満足な治療も受けられず、細々と生活している。国境なき芸能団としては絶対に訪問すべき街の1つである。
スレイマニア市からハラブジャまでは約2時間のドライブ。下町で買い出した毛布と衣服をトラック2台に詰め込み、いざ出発。「ハラブジャは寒いので、毛布は喜ばれるよ」。ハラブジャ出身の通訳、ファラドーンもうれしそうだ。
毒ガスが撃ち込まれた当日、彼はフセインと闘うペシャマルガ兵の一員として、山の中で生活していた。下界にいた家族はおばさんをのぞいて殺されてしまった。ハラブジャには「家族全員失った」という人が多い。なお、ファラドーンのおばさんは、重症をおいながらも生存して、なおハラブジャに暮らしている。
午前11時ハラブジャ到着。文部科学省を訪問し、現地の小学校で第2回目の公演を行う旨、伝える。責任者のハッサンさんが2つの小学校に電話。貧しい住民が多く住む小学校に毛布と衣服を配り、もう1つの巨大規模校で公演を行うこととなった。
支援物資を配った後、大規模校へ。公立なのであるが、地元の篤志家が寄付をして校舎を建て増ししている。子どもの人数が多いので、授業は2交代制。午後の部の授業風景を撮影する。鶴笑さんがクラスを訪問すると、みんな一斉に起立してクルド語で歓迎の歌を歌ってくれる。
午後2時、いよいよ第2回目の公演開始。学校のグラウンドに約800名の子どもたちが集合。どの顔も私たちを見て興味津々の様子。
玉すだれ 鶴笑さん.JPG

まずは鶴笑さんの南京玉すだれ。「何ができるかな?」というクルド語の音頭で、すだれが釣り竿や国旗になるたびに、大歓声と大爆笑。「リレー皿回し」では3名の子どもが何とか皿をリレーして、またまた大歓声。
次に阪野さんの手品。ただの紙切れがイラクのお札に変わると、「すごい!(とクルド語で言っているのだろう)」と大きな拍手。先生たちも食い入るように見つめている。高宮さんの似顔絵には、「僕を描いて」「私も」と子どもたちが殺到。この絵は彼らの宝物になるだろう。
そして最後は鶴笑さんのパペット落語。「ミン、ナウム、カクショー(私の名前は鶴笑です)」。クルド語で落語に挑戦。忍者やモンスターが現れるたび、爆笑に次ぐ爆笑。地元テレビがその模様を撮影している。
午後3時、公演が終了。「写真撮って!」。3人の芸能団に次々と群がってくる子どもたち。第2回公演も大成功のうちに無事終了した。
その後、芸能団はハラブジャの「平和資料館」を訪問。資料館には毒ガスで殺された5千名の名前が刻まれている。沖縄の「平和の礎」のクルド版だ。各部屋ごとに当時の写真が飾られている。毒ガスを吸い込んで皮膚の色が変色し、折り重なって亡くなった人々。水を求めて川に入ったまま亡くなっている人々の姿は、まさに広島、長崎と同じ光景である。
フセインがこの「大量破壊兵器」を使用したとき、アメリカは黙って見過ごした。15年後の03年、今度は「大量破壊兵器がない」状態のフセイン政権を空爆で破壊した。88年当時、フセインはアメリカ側の独裁者だった。
資料館の受付に記帳台があって、そこに国境なき芸能団が記帳し、館長に日本からのお土産を手渡す。それは京都の「木津9条の会」が作った手鞠だった。ヒロシマのある国、日本からのピースメッセージとして資料館に飾ってもらうことになった。
ハラブジャ訪問は大成功のうちに終了した。「私たちは日本を尊敬しています。ヒロシマであれほどの被害を受けたのに、見事に復興した日本は、私たちの目標です」。文部科学省のハッサンさんが言うように、この街では誰もがヒロシマを知っている。一方、私たち日本人はハラブジャを知らない。何とかこの事実を伝えて、交流が深まっていけばいいと思う。ハラブジャは治安が安定しているので、近い将来、多くの観光客が訪れてくれるようになればありがたい。


トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: 芸能団 「イラクのヒロシマ」を訪問する

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.nowiraq.com/mt/mt-tb.cgi/337

コメントする

このブログ記事について

このページは、nishitaniが2010年12月 6日 12:32に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「避難民キャンプで第一回目の公演大成功」です。

次のブログ記事は「がん病棟を訪問後、キャンプで毛布を配る」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.01