原発は日本の「疫病神」だ

レベル7という最悪の事態を招いている原発事故。根拠なき「安全神話」をふりまいた上に、事故が起これば「想定外」。あげくの果てには汚染水を海に垂れ流すという「犯罪行為」まで。なぜこんな事態を招いたのか?今後どうなっていくのか?私たちはこの事故を教訓に、今後何をすべきなのか?
4月6日阪南郡熊取町にある京都大学原子炉実験所を訪れ、小出裕章さんにインタビューを試みた。

西谷 福島第一原発で、私が最も懸念しているのは3号機です。あそこはプルサーマルでしょう?大爆発で格納容器が壊れているのではないかと心配です。
小出 プルトニウムという核物質をサーマルリアクター、つまり普通の原子力発電所で燃やそうという計画なので、プルサーマルと呼ばれています。ただでさえ危険な原子炉に、さらに危険を上積みするというとんでもないものです。
原子炉はもともとウランを燃やすように設計されているのに、ウランより20万倍も猛毒のプルトニウムを混ぜ合わせて燃やしているのですから。
西谷 石油ストーブに灯油とガソリンを入れて燃やしているようなものだと聞きました。なぜ日本はそんな危険なことを?
小出 危険であるとともに経済的にも高くつきます。使用済み核燃料からプルトニウムを取り出すのに膨大な作業とお金がかかります。「プルサーマルをやれば電気代が高くなる」ことを、電力会社自身が認めています。こんな馬鹿げたことをなぜやるのか?
元々は「もんじゅ」という特殊な原子炉で燃やすことを口実に、手に入れてきたプルトニウム。しかし「もんじゅ」は事故を起こして動かない。すでに日本は45トンものプルトニウムを抱えてしまった。これは長崎型原爆の4千発分です。「もんじゅで使わないのなら、どこで使うんだ」と世界から批判されるようになったのです。
西谷 核武装するつもりなのか、と疑われたのですね。
小出 それで「使い道のないプルトニウムは持ちません」と国際的に公約させられてしまった。諸外国はプルサーマルから撤退する中、日本だけがやらざるを得ない状況に追い込まれたのです。
西谷 今回の事故で、大気中からプルトニウムが検出されました。大丈夫でしょうか?
小出 幸いにも微量でした。過去に行われた核実験で、日本に飛んで来たのと同じくらいの量です。それよりも今はヨウ素、セシウム、テルルなどの核種が山ほど出ています。本当にどうしていいか分からないくらい危険な状態です。

西谷 今回の事故はスリーマイルを越えてチェルノブイリに近づいている、という状況ですか?
小出 スリーマイルをはるかに越えていることは、私には事故当日に分かりました。でも政府や東電は当日、何の根拠もなく「スリーマイルには至っていない」と過小評価。情けない人たちです。悲しいことですが、チェルノブイリ級の事故になりました。
西谷 チェルノブイリでは、風下で雨が降った地域に被害が集中しました。日本もそうした地区の人々は逃げるべきですか?
小出 地図上に円を描いて20キロまでは避難。30キロは自主避難。自主避難って何ですか(笑)。無責任な政府ですね。実際の汚染は40キロも離れた飯館村などで高濃度の放射能が検出されています。この村の汚染は、チェルノブイリで強制避難させられた地域の汚染よりも、もっと高い数字が出ています。
西谷 「ただちに健康に影響はありません」などとごまかさずに、すぐに脱出するレベルですね?
小出 放射線だけを考えればそうです。しかし地震と津波で大災害が起こっていてその上で、逃げる場所があるのか?と立ち止まってしまいます。受け入れ態勢も不足するし、避難先で亡くなってしまう人も出るだろう。途方に暮れる事態ですね。ただ、子どもは逃がせてあげたい。でも子どもだけ親から切り離して逃がすわけにもいかない。被災者には大変な重荷です。ひとたびこのような事故を起こすと、大変な結果になるということを、私たちは知らなければいけない。
西谷 チェルノブイリでは4〜5年後に、甲状腺がんの子どもが急増しました。福島の子どもたちにも同じようなことが起こるのでしょうか?
小出 残念ですが、被害は必ず出ます。しかし因果関係を証明できない。疫学的に証明するには、長い時間とたくさんの子どもの調査が必要です。「この事故のためにがんの子どもが増えた」と科学的に証明される頃には、手遅れになっているでしょう。

西谷 まさに非常事態に陥ったわけですが、さらに許せないのは低濃度の汚染水を海に放出したことです。
小出 報道では低濃度とされていますが、私から見れば「とてつもない高濃度」です。今回の汚染水は国の安全基準の100倍を超えるもので、それを1万何千トンも海に捨てたのです。
西谷 テレビに出てくる「御用学者」さんは、「薄まるから影響ない」と言ってましたが。
小出 自然には放射能の浄化作用はありません。ある一カ所の危険が薄く広がるだけです。食物連鎖で広がっていきます。
西谷 コウナギから基準値を超えるセシウムが検出されましたしね。
小出 一番汚れているのは海藻です。次に貝などの底性生物。そして小魚が続きます。しかし海藻のデータはまだ1つも出てきていません。
西谷 なぜ海藻のデータが出てこないのですか?東電は調べているのでしょうか?
小出 調べないはずがありません。福島・茨城県も、国も、東電も当然調べているはずです。
西谷 先生は、海水を注入したときから「いずれ汚染水があふれるから、タンカーを用意すべき」とおっしゃってましたが、間に合いませんでした。なぜ対応が後手後手になっているのでしょう?
小出 政府も東電も「こんな事故は起こらない」と言い続けてきたのです。油断と怠慢。打つ手を考えてこなかった。後手後手になるのは当たり前です。
西谷 その打つ手ですが、とにかく原子炉を冷やすことですか?
小出 事故当時も、今も、今後も、冷やすことしかありません。最終的にこの事故を終息させるには、何十年もかかります。

西谷 この事故を受けて、原発を止めてほしいという運動が広がっています。即刻全ての原発を止めるべきでしょうか、それとも浜岡原発など、危ないものから順番に止めていくべきでしょうか?
小出 私は一気に止めるべきだと思っています。日本中の原発を即刻止めても電気には困りません。火力と水力でまかなえます。夏のピーク時でも足りています。しかし節電はしなくてはいけない。火力発電も環境には良くないですから。私たちはエネルギーを使いすぎている。エネルギーを浪費しなくてもいい社会を作ることが必要です。この悲惨な事故から、教訓を引き出して日本が変わらなければなりません。

西谷 そのためにはメディアの問題があります。原発の危険性を訴え続けていた先生たちのことをMBS(毎日放送)がドキュメンタリーにしましたが、その放送に関西電力が噛み付いたそうですね。
小出 「異端の研究者たち」というタイトルが示すように、原発に反対してきた私や今中さんなど「熊取6人衆」の活動を取り上げた番組でした。担当のディレクターさんは慎重に取材されて、私たちだけでなく原発推進の方の意見も取り上げました。関西電力から見ると、私たちのような意見をマスメディアに載せたこと自体が気に入らなかったのでしょう。
西谷 小出先生、今中先生たちをテレビに出したこと自体が気に喰わない。
小出 放送の翌日、関電がMBSに抗議に来て、CMのスポット契約を取り消すとか、ディレクターの人事に口を出すとか圧力をかけたようです。最終的には「MBSの社員は原発に関する間違った知識を持っている」という理屈で、関電がMBSの社員に「正しい知識」をレクチャーして決着したと聞いています。

西谷 小出先生はここで37年、ずっと昇進せずに「助教」ですね。
小出 そうです。昔は「助手」という名称でしたが、今は「助教」ですね。
西谷 同僚の方は多くが教授になっておられるのでは?
小出 そうです。通常なら教授ですね。
西谷 熊取6人衆は、すべて「助教」のままですか?
小出 講師になった方、助教授まで昇進した方もいますが、すべて教授にはなっていません。

西谷 原発に関しては、政府と大学などの研究者、東電や関電などの財界、さらにはテレビ業界などがよってたかって「利権の構図」を作り出しているので、タブーにされてきましたね。
小出 核という言葉は原爆や核実験を想像しますが、原子力は平和エネルギーというプラスイメージ。マスコミが「原子力は素晴らしい」と日本人を洗脳してきたのです。でも実際は同じこと。ニュークリア・ウエポンが核兵器で、ニュークリア・パワープラントが原子炉。例えばニュークリア・デベロップメントという言葉を、イラクやイランがやれば「核開発」と訳す。しかし日本がウランを濃縮すると、同じニュークリア・デベロップメントでも「原子力開発」と訳されるのです。

西谷 国民をだまし続けてきたといて点では、「原子力発電所はCO2を出さない」という宣伝もそうですね。
小出 私たちの指摘を受けて、関電は「発電時にはCO2を出しません」と、言い換えました。ウランを掘ってくる時、精錬する時、濃縮・加工も石油燃料でやる。つまりCO2を出しますね。
西谷 さらに使用済み核燃料を冷やし続けなければならない。一体何年くらい冷やさないと無害にならないのですか?
小出 原子炉内の燃料プールで何年か冷却して、六ヶ所村の再処理工場へ。ここでプルトニウムだけを取り出し、残りはガラス固化して保管するのだ、と言ってきたのです。ところがガラス固化に失敗して、現在は立ち往生しています。
仮にガラス固化に成功して、地中深く保管できたとしても、無害になるまでには100万年かかります。
西谷 えっ、100万年、ですか?
小出 だから無理なんです。政府は地下300mまで穴を掘ってそこに保管する、といいますが100万年の内に巨大地震が起こるかもしれない。かといってずっと冷却すれば莫大なエネルギーと費用がかかる。
西谷 つまり原発は決して安くない電力だということですね。
小出 核のゴミのことを考えなくても、すでに原発は高いのです。テレビで宣伝しているのは、国があるモデルの下で計算した机上の空論です。立命館大学の大島教授が、電力会社の有価証券報告書を計算して、導きだした結果は、「原発は火力よりも水力よりも高くつく」という事実でした。70年代に原発が稼働してから今日まで、一貫して原発の方がコストがかかっているのです。

西谷 CO2は排出するし、コストはかかるし、危険な上に100万年後までゴミ処分。いいところなしの原発は即刻廃止すべきだということがよくわかりました。最後に、この事故を受けて先生からメッセージを。

小出 起きてはいけない悲劇が起こってしまいました。「電気がほしい」と使い続けてきたのが都会の人々。作り続けてきたのが過疎地の人々。この事実1つとっても原発は止めなければなりません。こんな事故が起こる前に止めたいと思って警告し続けてきましたが、人々は私の訴えに耳を貸さなかった。今後は、健康や土地、農業漁業などの仕事に何十兆円、何百兆円という被害が出るし、次の世代にも被害が続いていくでしょう。原発が作り出してきた電気とは比べ物にならない損失です。私たちはここで学ばねばならない。今こそ、この国のエネルギー政策を変えなければならないと思います。

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このページは、nishitaniが2011年4月15日 20:12に書いたブログ記事です。

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