パキスタンにて その4

8月19日、少々危険だが、ペシャワールへ。2年程前までは、ペシャワールは安全で、おそらく一人旅のバックパッカーでも訪問できただろう。しかしこの2年で情勢は一変した。米軍が「ドローン攻撃」を始めたのだ。ドローン、無人空爆機によるタリバン掃討作戦だ。
主にペシャワールから西側の部族支配地域で、このドローン攻撃が繰り返されている。
私は「正義の戦争」などないと思っている。戦争は常に「正義のため」「自衛のため」「権益を守るため」などと主張されるが、実態はウソ、ダマし、強欲な「邪悪な動機」で始まると思っている。百歩譲って、「正義の戦争がある」としよう。オバマは常に「テロとの戦いは正義の戦争だ」と演説している。

でも無人機で無抵抗な村を襲う戦争が、果たして「正義」といえるのか?

当然、攻撃されている「部族支配地域」は反米一色に染まっていく。
そこにマドラサがある。純粋な10代の若者にコーランを勉強させ、そして「聖戦」を教える。
私はこのマドラサを取材すべく、ペシャワールに向かったのであるが、マドラサ周辺にはISIの目が光っていて、外国人ジャーナリストは間違いなく検挙されてしまう。今年に入って、フランス、ドイツのジャーナリストが、同じような取材を試みて、見事に拘束されている。マドラサはあきらめるしかない。

ペシャワールはイスラマバードから高速を飛ばして2時間半。街中は一見すると何の変哲もなく、平和に見える。道行く人々はほとんどがパシュトン人で、ウルドゥー語しかしゃべれない通訳を連れていくと、ほとんど役に立たない。
ペシャワールの公設市場へ。庶民相手の「蚤の市」だが、入り口には銃を手にした警官。自爆テロが増えたので、警備が必要になったという。
中に入れば、普通に日用品やおもちゃ、婦人服などが売られている。不自然にはビデオカメラを回せないので、純然たる旅行者のように買い物をしながら、パシュトン文化に興味があるようなそぶりを見せながら、それとなくインタビューしていく。
警官「今年に入って治安はますます悪くなっている。自爆テロが増えた。でも市内は大丈夫だ。市外に出たらダメだよ」
店主「外国人旅行客なんて皆無に等しいね。商売上がったりだ」。
こんな取材をしていたのが午後1時半頃。その30分後、ペシャワールからほんの10キロ、部族支配地域のモスクで自爆テロがあり、48人が殺された。犯人は10代の若者。ズボンの中に仕組んだ爆弾を、金曜礼拝中に爆発させたのだ。
翌日犯行声明が出た。パキスタンタリバンだった。動機は?モスクの地域の部族棟がパキスタンタリバン運動に批判的だったからという理由。
それだけで、約50人近くの人々が何の理由もなく殺される。10代の若者はおそらく「マドラサで洗脳」されたのだろう。マドラサは自爆テロ犯製造機になっている。ISIは、影でタリバンを支援しているのでマドラサの内部を絶対に見せないのだ。今後もこうした自爆テロが続くだろう。911事件から10年、結果として、米国が始めた戦争は、テロを押さえ込むどころか、反米感情をあおり、暴力には暴力で対抗するという気運が広がり、ますますテロを助長している。

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このページは、nishitaniが2011年8月22日 23:17に書いたブログ記事です。

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