橋下前知事に対して、住民訴訟を始めます

伊丹万作の「戦争責任者の問題」というエッセーがある。概略を紹介する。
「(前略)多くの人が今度の戦争でだまされていたという。私の知っている範囲では俺がだましたのだといった人間は一人もいない。たとえば民間のものは軍や官にだまされたと思っているが、軍や官の中へはいればみな上のほうをさして、上からだまされたというだろう。上のほうへ行けば、さらにもっと上のほうからだまされたというにきまっている。するとたった一人や二人の人間が残る勘定になるが、いくら何でもわずか一人や二人の知恵で一億の人間がだまされるものではない。
すなわち、だましていた人間の数は、一般に考えられるよりもはるかに多かったに違いないのである。しかもそれは「だまし」の専門家と「だまされ」の専門家に分かれていたわけではなく、いま、一人の人間が誰かにだまされると、次の瞬間には、もうその男が別の誰かをだますということを際限なく繰り返していたので、つまり日本人全体が夢中になって互いにだましたりだまされたりしていたのだと思う。
このことは戦争中の末端行政の現れ方や、新聞報道の愚劣さや、ラジオのばかばかしさや、さては町会、隣組、警防団、婦人会といったような民間の組織がいかに熱心にかつ自主的にだます側に協力していたかを思い出してみればすぐに分かることである。(中略)
私はさらに進んで「だまされるということ自体がすでに一つの悪である」ことを主張したいのである。(中略)
つまりだますものだけでは戦争は起こらない。だますものとだまされるものとがそろわなければ戦争は起こらないということになると、戦争の責任もまた(たとえ軽重の差はあるにしても)当然両方にあると考えるほかはないのである」
(後略)
この文章は1946年8月、映画春秋という雑誌に掲載されたものだ。
「だまされたものにも戦争責任がある」という痛烈な指摘は、その後、この日本において生かされてきたのだろうか?
大阪市の新市長に橋下徹という人物が選ばれてしまった。彼は「教育は2万%強制」といい、「日本の政治には独裁が必要」と主張する。大阪の有権者は、そんな彼の独裁的手法に、一抹の不安を感じながらも、「今の閉塞的状況を打ち破ってほしい」「こんな時代には少々強引に進めるリーダーが必要」「公務員(ダメ教師)を削ってくれるのは彼だけだ」など、彼の政策もしっかりと理解しないまま「何となくイメージだけ」で選んでしまった。このツケは数年後、かなり大きくなって、橋下新市長を支持した、まさにその人々に返ってくるというのに…。
脱原発の学習会で、「(脱原発を決めた)ドイツと日本の違いは何でしょうか?」との質問が出た。おそらく、それは「責任の取り方が違ったからだ」と思ったからそう答えた。
ナチスの犯罪を謝罪し、犠牲になったユダヤの人々にちゃんと補償をしたのがドイツの戦後。一方、日本は「一億総懺悔」で、「過ちは繰り返しませんから」と石碑に刻む。何という曖昧さ、そして主語のない文章!
今回の原発事故もそうだ。「がんばろう福島」「負けないっぺ福島」。そんな標語で生活は補償されるのか?流された家は帰ってくるのか?ローンは、仕事は…。
町に掛ける看板は「東電よ、きちんと補償せよ」「政府は責任を持って故郷を復興させよ」であるべきではないか。
エジプトやリビアで、独裁者を打倒する若者たちの運動を目の当たりにしてきた。彼らは独裁者に偏る富、理不尽な格差、政治的自由などを求めて、街頭に繰り出し、デモをして、とうとうその独裁者を打倒してしまった。
つまり中東の若者たちは敵を見誤らなかった。貧困層と中間層が団結し、「生活を苦しめている本当の敵」に向かっていった。
一方、日本はどうだったか?
年収700万円の「隣の公務員」に対して、年収200万円の非正規労働者が「怠けている」「リストラされないのは不公平」「ダメなヤツはクビを切れ」と、その怒りを向けた。
しかし怒りの矛先が向かうべきだったのは、「株式の投資で年間何十億円もの所得を得ている人々」「内部留保を溜め込みながら、労働者のクビを切り捨ててきた大企業経営者」「そんな富裕層から献金をもらって当選してきた政治家たち」ではなかったか。
日本の株式所得に掛けられる税金はわずか10%だ。そして新富裕層は株や証券の投資で、巨額の富を築いている。
ではなぜそこから税金を取らないのか?ちなみにフランスは株の所得に30%課税している。なぜ毎日の生活がギリギリの人々が消費税を10%も取られようとしている時に、この株式所得への極めて低い課税率が問題にならないのか?
本来なら、非正規雇用の労働者と公務員が連帯して、「富裕層からもっと税金を取れ」と言うべきなのに、なぜ「底辺同士で」争っているのか?
橋下新市長は一部で「ハーメルンの笛吹き男」と言われている。笛の音に釣られて洞窟に閉じ込められた子どもたち。
この場合、確かに笛吹き男には罪がある。しかし「だまされてついていった子どもたち」に罪はないのか?
「だまされるな、この王様は裸だ!」と叫ぶ子どもになろう。
私はこの笛吹き男、いや大阪新市長を相手取って、WTCビル購入と庁舎移転の問題について、来年早々から裁判をすることになる。WTCビルへの府庁舎移転に伴う巨額の税金支出に関して、橋下徹前知事の責任を明らかにし、彼にそのお金を支払ってもらおうという裁判である。
提訴は1月12日になる予定だ。

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このページは、nishitaniが2011年12月29日 12:57に書いたブログ記事です。

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