キルクークへ

11月21日、今日は油田都市キルクークへ行く。キルクークはISとクルドのペシュメルガが、まさにその油田を巡って、内戦状態にある。スレマニからキルクークまでは高速を飛ばして2時間。通訳のファラドーンの車で、いざキルクークへ。スレマニを出て1時間ほどで、ペシュメルガの訓練キャンプ。あらかじめ許可を得ていたので、基地の中に入ることができた。この基地内に「女性兵士のための訓練施設」があり、その取材許可を得ていたのだ。
「ヤック、ドゥー(1、2)」。女性兵士たちが行進している。女性司令官によれば、ISと戦う特殊訓練をしているそうで、兵士の数500名以上。年齢は18歳から30歳。独身ばかりではなく、結婚して子育て中の兵士もいる。子どもを産めば、6か月の育休があるという。クルドは大家族なので、その後は叔母や祖母などが子育てをしているらしい。
基地の中にISとの戦闘で亡くなった女性兵士の写真。その写真の前で、30名ほどの女性兵士が整列している。
指導する兵士も女性だ。号令の下、2名の兵士が前に出て、合図とともにカラシニコフ銃を解体し、そして組み上げる。その間約30秒。いかに素早く銃を解体し元に戻すかという訓練で、実戦ではこの作業が遅れると命取りになる。この兵士たちは、ISとの前線でも活躍するのだが、DVに悩む女性シェルターのボディガードも行う。日本でもそうだが、ここクルドでも夫や恋人からの理不尽な暴力に耐える女性たちがいて、そのためのシェルターがある。元夫や恋人がシェルターを襲うことがあるので(日本も一緒)、その用心棒になるのだという。
「イスラム圏で女性兵士がいるのはクルドだけ。ISやアルカイダなど原理主義者たちは女性の権利を認めない。クルドは女性も男性と同等の権利を有しているので、兵士にもなります。これが民主主義です」。
司令官は、このように説明してくれたのだが…。
女性兵士訓練キャンプを後に、キルクークへ。チェックポイントを超えて、キルクーク入りするとすぐに地面から炎が噴き出している。油田だ。この地域は石油の宝庫で、あちこちから原油が吹き出す。そして赤茶色に錆び付いたパイプラインが、はるかトルコまで伸びている。
そんなキルクークの郊外を西へ西へと走ることさらに1時間。巨大な石油施設が現れた。チェックポイントがあり、石油精製施設を隠し撮りしていたら、警備の兵士に見つかった。「石油施設だけは撮影してはならない」のである。撮影した写真を削除して、解放される。「石油施設」はISの襲撃対象なので、セキュリティーが特別に厳しいのだ。
更に西へ車で10分。前線に到着。塹壕から数十人の兵士が出てくる。ここから1キロ西側はISの支配地域。ズームでIS側を撮影。今年3月に来た時より、前線はかなり西に移動している。ISとクルドは長い「国境線」で接しているので、どこで戦闘が起こるかわからない。24時間態勢で警戒している。
兵士が持っているのはロシア製のカラシニコフ銃とドイツ製の自動小銃。ドイツの武器がクルドのペシュメルガに流入している。ドイツのメルケルがクルドに武器の援助をする、という記事が出ていた。ドイツ以外に、イギリス、フランスの武器も流入している。
一通り前線を取材し、帰路につく。前線からキルクークまでの道中、バイハッサンという町に巨大な油田。少し離れたところから吹き出す炎と石油精製施設を撮影。パイプラインがトルコ方面へと伸びている。イラク戦争は石油のための戦争と言われた。03年にイラク戦争が始まってからすでに12年の歳月が流れた。フセインは倒されたが、石油をめぐる内戦は終わらない。石油施設の壁には「クルドオイル」という看板。「クルド政府が運営している」ことを示しているが、実際にはエクソン、BP(ブリティッシュペトロ)、トタル(仏の石油会社)、ガスプロム(ロシアの石油会社)が入り込んでいる。そしてISを空爆しているのも、米、英、仏、ロなのだ。私は ISを支持しているのでは決してないが、「出来すぎた空爆」だと感じる。この地域が典型的な例になるが、「世界は武器と石油の取引で回されている」のだ。
日が沈む。幾つかの検問を無事通過し、無事スレマニに到着。今回もキルクークを取材できた。ここを訪問するたびに、「この土地は宝の山だ」と感じる。皮肉なことに「この土地が宝の山」だからこそ、争いが生じている。地面から吹き出ているのが石油ではなくて温泉だったら、ここは平和だったのになー。

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このページは、nishitaniが2015年11月23日 01:04に書いたブログ記事です。

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