ペシュメルガの訓練基地で

11月23日、今日はスレマニ郊外のペシュメルガ訓練基地へ行く。広大な山裾にトレーニング用の運動場と兵舎。まずは司令官のアミールさんにインタビュー。この基地に約300名の兵士がいて、IS支配地域への地上戦を想定して、訓練をしている。教官はクルド人だけでなく、アメリカ、オーソトラリア、ニュージーランド、デンマーク、イタリアなどから退役兵士がやってきて訓練に当たっている。武器は主にドイツとイタリアから。フランスやイギリス、アメリカの武器もあるが、米英仏は空爆してくれているので、地上戦の武器は(空爆していない)ドイツ、イタリアからのものが多い。
一通りインタビューをして、訓練場へ。
広大なグランドに兵士のグループが数カ所。まずは地雷、IED(路肩爆弾)撤去処理班の訓練を取材。兵士が金属探知機で慎重に地面を探り、雑草を刈り取っていく。雑草に隠れて爆弾が仕掛けられているので、まずは地面が見えるようにすること。10センチ、20センチと、センチ単位で前進する。兵士は防弾チョッキにヘルメット。ちなみにこの金属探知機はドイツ製だ。教官はニュージーランド人とオーストラリア人。退役軍人である。民間軍事会社の社員と思われる。
次にブービトラップ除去班へ。家に見立てた建物の中にどうやって侵入するか。家の中に箪笥があって、その箪笥の扉を開ければ爆発物が作動するようになっている。兵士は慎重にその箪笥にカギ付きの紐をくくりつけ、離れたところから紐を引っ張って爆発させる仕組みだ。
コカコーラの缶が置いてある。拾って持ち上げると爆発する。家に見立てた壁のところにロシア製の地雷が置いてある。地雷からは細いビニール紐が伸びていて、その紐が雑草で隠れている。兵士がその紐を足で引っ掛けてしまうと、地雷が爆発する仕組みだ。兵士は慎重に紐に近づき、長いアルミのしなやかな棒で、ビニール紐を取り外す。
家の扉がある。扉を開けると爆発するので、大きな三脚に30キロの重りをつけて、数十メートル離れたところからロープを引っ張り、重りで扉を破壊する。その後、兵士が家の中に侵入する。
以上のような訓練を繰り返していた。実際、モスルやラッカなど、IS支配地域では、このようなブービートラップが多々あって、ペシュメルガ兵士がたくさん犠牲になった。指導教官の米兵やオーストラリア兵は死なないが、実際に路肩爆弾で吹き飛ばされるのはイラク人(ペシャメルガ)で、首尾よく家に侵入した後、ISと疑われ、自動小銃で射殺されるのもイラク人(IS支配下の一般市民)だ。そして空爆しているロシア兵、フランス兵も(ISは高高度まで届く対空砲を持っていないので)殺されない。そして武器だけが消費されていく。
ロシア旅客機の爆破と仏のテロ後、猛烈な空爆が繰り返されている。おそらく短期的にはISは追いつめられる。ペシュメルガがイラク北部の都市を取り戻していく日も近いだろう。しかしそれでテロはなくなるか?ISはペシュメルガの背後に米英露仏がいることを知っている。追い詰めれば追い詰めるほど、欧米の都市でテロの危険が高まる。空爆とテロの繰り返し。私には、これは武器と石油支配をめぐる「壮大なゲーム」のように感じる。この繰り返しでは人が殺されるだけだ。
平和外交と地域住民の平和的蜂起。武器の流入の遮断。そして暫定政府の設立と民主的な選挙。こうした道筋を通らないと、この地域は安定しないと思う。

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このページは、nishitaniが2015年11月24日 16:38に書いたブログ記事です。

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