ガジアンテップその4

5月14日午前10時、ガジアンテップ郊外の団地に住むレンダ・ハムーイさん(35)宅へ。レンダさんはダマスカス郊外のゴータ地区に住んでいた。ゴーダ地区はアサド政府軍が毒ガスを使って1000人以上を虐殺した街として有名になった。2013年8月21日のこと。毒ガスを吸って苦しんでいる子どもの姿がテレビで何度も流れたので、覚えている人も多いだろう。
アサド軍はゴータ地区の住民を「全て浄化」したかったと思われる。毒ガス攻撃の翌年、戦車隊が地区に入ってきた。
近隣の家に戦車砲が命中した。轟音とともに煙が上がる。その時ラナさん(15)とアディブくん(10)は何が起きたのか確認したかった。きょうだいがバルコニーに出て、戦車砲が命中した家を眺めていた時だった。別の戦車砲がきょうだいめがけて飛んできた。
気がついた時は病院のベッドの上だった。ラナさんの両足と左手は切断されていた。アディブくんの右足も膝から下がなくなっていた。ダマスカスの病院で一ヶ月過ごし、その後ガジアンテップに逃げてきた。ここの病院で半年間治療を受け、松葉杖と義手をもらった。ラナさんは母(レンダさん)の介護を受けて中学校に通う。アディブくんは自力で小学校に行く。
「両足と左手を失うまでは、お医者さんになりたかった。今はITエンジニアを目指しているの」。自分では移動できないので、医者を諦め、座ってできる仕事に夢を託す。アディブくんにも同じ質問。「以前はパイロットになりたかった。今は探偵になりたいよ」。こちらでは「未来探偵コナン」の漫画が流行っていて、その影響のようだ。自分では動けないので、普段はどうして過ごしているのか、尋ねてみた。「絵を描いているの。色鉛筆で友達とか漫画の主人公とか」。ラナさんの描いた絵を見せてもらう。片足の少女が描かれている。自分自身を描いたの?と尋ねたら、「違うよ。友達も片足になったの」。
父親はすでにこの戦争で殺されている。自身も重症を負っているが、質問には前を向いてキッパリと答えてくれるラナさん。悲しみを封印して母に負担をかけないようにしているようだ。「写真、撮ってもいいかな?「ダメ。話をするのはいいけど、写真だけは絶対にイヤ」。彼女のプライドが許さないのだろう。写真はないが、彼女の描いた絵とキッパリとした受け答えを文字にすることで、少女の悲しみと将来への決意がみなさんに伝わることを願う。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: ガジアンテップその4

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.nowiraq.com/mt/mt-tb.cgi/582

コメントする

このブログ記事について

このページは、nishitaniが2016年5月14日 23:02に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「ガジアンテップその3」です。

次のブログ記事は「リムさんのこと(ガジアンテップその5)」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.01