パラダイス文書について

今年1月、世界の貧困撲滅に取り組むNGO「オックスファム」が、衝撃的な数字を発表した。わずか8名の億万長者と世界の貧困層の下から数えて半分、約36億人の資産が同じだというのだ。わずか8名の中にはビルゲイツやウォーレンバフェットなど、日本でもよく知られた名前が入っている。なぜここまで格差が広がってしまったか?いろんな理由が挙げられるが、その中の一つにパラダイス文書で明らかになった、「大金持ちだけの卑怯な税金逃れ」があるだろう。
パナマ、ケイマン諸島、バミューダ諸島、デラウエア州など、タックスヘイブン(租税回避地)にペーパーカンパニーを作って、そこに資産を移すことで税逃れをする手口である。
このパラダイス文書は、バミューダ諸島に拠点を置くアップルビー社の顧客情報が何者かにハッキングされて流出、それが南ドイツ新聞社を経由してICIJ(国際調査ジャーナリスト連合)に渡り、世界のメディア各社が共有して発表されたものだ。2016年5月には同様の経過でパナマ文書が発表され世界に衝撃を与えた。このパナマ文書を調査し実態を暴いた記者の一人、ダフネ・カルアナガリチアさんが、マルタで今年10月に何者かによって自動車ごと爆殺されている。この種の文書は「闇が深く」、調査報道に関わるジャーナリストは命がけで事実を暴いてくれている。
パラダイス文書にはエリザベス女王や鳩山元首相の名前などが出てきたが、最も追求すべきなのはアメリカのロス商務長官だろう。ロス氏はトランプ政権の中枢にいながら、彼の所有する海運会社ナビゲーターとロシアの石油化学企業のシブールがつながっていて、巨額の利益を隠して租税回避していた。そしてこの石油会社シブールは、あのプーチン大統領の娘婿シャマロフ氏が役員を務めているというのだ。
2014年2月のウクライナ危機の時に、ロシアのプーチン大統領は武力でクリミア半島を奪い取った。その後、国際社会はロシアに経済制裁を課していた。いわば各国に対して「ロシアとの取引は控えましょう」と訴えるべき商務長官が、まさにそのロシアとの取引で巨利を得ていたのだ。トランプ大統領自身のロシア疑惑と合わせれば、政権が飛ぶくらいの衝撃になるはず。しかしその後、このパラダイス文書はあまり報道されず、疑惑は尻すぼみだ。どこか日本の「モリカケ疑惑」と同じニオイがする。
パラダイス文書ではアップルやナイキという米国を代表する企業の名前も出てきた。大資産家、大企業は大手マスコミのスポンサーである。先日はあの加計学園の広告が読売新聞に掲載された。パナマ文書にはユニクロやセコムの名前も出ていた。テレビには今もアップルやユニクロのCMが氾濫している。このCMがなくなればテレビ業界はますます苦境に陥るだろう。肝心のメディアが追求しなければ世間は忘れる。アッキーや加計理事長を証人喚問せよ、数ヶ月前までの大きな世論が、いつの間にか消えて無くなったようになって、今やテレビは横綱日馬富士がビール瓶で殴ったか殴らなかったか、がトップニュースである。
そしてスキャンダルから守られて、小選挙区制度による「虚構の数字」で圧勝したかのように報道されている安倍首相が、やはり疑惑の人物トランプ大統領とゴルフをする。
仲睦まじく語り合っている姿だけが報道されて、その陰で米国製の馬鹿高い兵器を言い値で買わされていく。兵器が売れれば、米国の軍産複合体やそれに付随する日本の大企業は、トランプ&安倍スキャンダルを追いかけない「羊のようなテレビ」を優遇するだろう。
日本で儲けたお金を、大富豪、大企業たちはケイマン諸島などに移転させる。その金額は2011年で約55兆円、13年では63兆円に膨らみ、昨年は約75兆円に上った、と報道されている。ちなみに63兆円で計算してみよう。日本の法人税率が約35%なので、これら63兆円が「逃げずに正々堂々と」日本で払っていれば、約22兆円になる。この22兆円というのはどんな数字か?
2014年の所得税は約14兆円強、消費税は8%に引き上げて約15兆円、そして法人税はわずか10兆円、その他合計しても約54兆円の歳入に過ぎない。
もし大富豪や大企業がパナマやバミューダなどに逃げないで、日本で払っていれば…。
消費税ゼロ%でも、今より豊かな福祉や教育が実現していた、ということだ。
これはこの社会の根幹に関わることである。税金というのは富の再分配、つまりみんながこの社会を公平に成立させ、より豊かにしていくためのシステムである。
この根幹が「卑怯な税逃れ」で崩れているのだ。だからパナマ文書、パラダイス文書で明らかになった真実を、もっと調査して、今後はこのような道義的社会的不正を許さないシステムに変えていかないとダメなのだ。「抜け穴を塞げ!」アメリカのサンダース氏が文書の開示を受けて、このように主張した。彼はアメリカの格差社会を批判し、1%対99%の戦いを挑んだ議員である。日本もアメリカ同様、貧困化が進み、例えば大学まで進学して有利子の奨学金を借り続けると、卒業時に数百万円の負債を抱えてしまう。その上で就職に失敗したら、奨学金破産に追い込まれる。そんな若者が増えていく一方で、マン島に自家用ジェット機やヨットのリースビジネス、と称して巨額の資産が脱税されていくのだ。これほど不公平な話はない。
トランプとステーキを食べた、帽子に名前を書いて交換した、娘は元トップモデルだった…。劣化した政治家と劣化したメディアが、この国をダメにしている。パナマ文書とパラダイス文書によって暴かれたスキャンダルは、決して忘れてはならない。

トラックバック(0)

このブログ記事を参照しているブログ一覧: パラダイス文書について

このブログ記事に対するトラックバックURL: http://www.nowiraq.com/mt/mt-tb.cgi/605

コメントする

このブログ記事について

このページは、nishitaniが2017年11月23日 15:18に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「この国の劣化 (アベとトランプとエルドアン)」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

Powered by Movable Type 4.01