コラム: 2007年4月アーカイブ

2003年と04年にイラク入国した際、通訳として行動をともにしたワリードが、バグダッドを離れてチェコに逃れた。若い頃チェコに留学していたので、チェコ語はしゃべれるワリードだが、妻と3人の子どもは、これから異国の地で新しい生活がスタートするわけだ。何はともあれ、無事でよかったが、ワリード一家は、スンニ派の平均的な所得層の家族である。05年頃から、彼は何度もメールで「もうバグダッドには来るな。殺されるぞ」と警告してくれていた。04年には一緒にサドルシティーに入り、ツワイサ核施設にも同行してくれた。拙著「報道されなかったイラク戦争」にもワリードのことを、

ワリードとは03年11月、バグダッドで知り合った。ヨルダンの首都アンマンから乗り合いバスでバグダッドに到着した夜、レストランで食事をしていたときだった。メニューの全てがアラビア語で、店員も周囲の人々も英語が通じなかったものだから、途方にくれていると、「ディナーはうれしそうな顔で食べないとダメだよ。スマイルスマイル」とクリアーな英語。こいつや!「おまえ、名前は?」「ワリード」「英語、上手だな」「チェコに留学していた」「今の仕事は?」「高校で物理を教えている」「明日は仕事あるか?」「仕事なんて何とかなる。というか、イラク全体が失業状態だよ」「車持ってるか?」「72年製のトヨタだけど。十分走るよ」。かくしてワリードは私の通訳&運転手になった。1972年製のトヨタは、冷房もなく窓も開かない代物だったが、サドルシティー、マハムディーヤなどの激戦地を走り抜けてくれた。ワリードは戦場となったバグダッドに住んでいる。「チェコは良かったぜ。美人ぞろいで、毎晩ウイスキーで宴会。当時はイラク人のほうが金持ちでモテモテだったよ」。下ネタ大好きで陽気なワリードから笑顔が消えていなければいいが・・・。

と、紹介したのだが、やはりバグダッドには住み続けることができなかった。「もうバグダッドには戻らない」と言い切るワリード。彼にとっての故郷は永遠に思い出の中だけになるのだろうか・・・。

各地の講演会に伺って、「アメリカはイランと戦争をするつもりでしょうか?」と、よく聞かれるようになった。私は競馬などの予想屋ではないので、ハッキリと「やる」「やらない」とは言えないが、現時点では「本格的な戦争はやらないだろう」と考える。
理由は、「イランが強大だから」である。以下はレバノン在住のジャーナリスト安武氏や、アンマン在住のハリルの意見などを参照に現時点での考え。
もしアメリカがイランを叩くと、イランは3つの対抗措置を駆使する。
1つは、ホルムズ海峡の封鎖。これは西側にとって痛手。ペルシャ湾のタンカーが通行できなくなれば、原油価格は急騰、世界同時不況に突入する恐れがある。中東の原油に頼りきる日本は特に大打撃。
2つ目が、ヒズボラにイスラエルを叩かせる、こと。イランの指示でヒズボラは動くから、アメリカの動きによっては、ヒズボラが「報復」としてイスラエルを叩く。これに呼応してハマスも南から動き出すので、イスラエルは南北からはさまれた形で攻められる。この事態はイスラエルも避けたいと思っているはずだ。
3つ目が、イラク南部のシーア派の一斉蜂起。南部シーア派は実質上、イランの影響下にあり、イランの指示があれば、更なる反米闘争に立ち上がり、実質上、イラク南部油田は、イランの影響下に落ちることになるかもしれない。ただでさえ、イラクで手を焼いているアメリカにとって、これ以上の米兵死亡者急増は望まないだろう。
以上3点から、アメリカはイランに手を出しにくい。
イランとアメリカが「瀬戸際外交」をすることによって、アメリカは「やはり軍事力を削れない」となるだろうし、イランは国内不満分子の蜂起を、アメリカが敵なので、団結せよとなり、結果として大統領支持基盤が固まっていく。つまり、現在の「やるぞやるそ」という狼少年的緊張関係は、ブッシュとアハマディネジャドにとっては好都合なのではないか。
しかし、やはり「どこかで戦争を始める」のがアメリカであろう。「アメリカの公共事業は戦争」だからだ。
イランかもしれないし、シリアなのかもしれない。中央アジアも可能性がある。一番可能性が低いのは北朝鮮だろう。
いずれにしても、イランが原油決済をユーロで始めたことは、アメリカにとって戦争への序曲ではある。現時点では、「ベクトルは戦争へと向いているが、あまりにイランが強いので、しばらく自重して様子見を続ける」のが、アメリカの対応ではないかと見ている。

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