nishitani: 2017年11月アーカイブ

今年1月、世界の貧困撲滅に取り組むNGO「オックスファム」が、衝撃的な数字を発表した。わずか8名の億万長者と世界の貧困層の下から数えて半分、約36億人の資産が同じだというのだ。わずか8名の中にはビルゲイツやウォーレンバフェットなど、日本でもよく知られた名前が入っている。なぜここまで格差が広がってしまったか?いろんな理由が挙げられるが、その中の一つにパラダイス文書で明らかになった、「大金持ちだけの卑怯な税金逃れ」があるだろう。
パナマ、ケイマン諸島、バミューダ諸島、デラウエア州など、タックスヘイブン(租税回避地)にペーパーカンパニーを作って、そこに資産を移すことで税逃れをする手口である。
このパラダイス文書は、バミューダ諸島に拠点を置くアップルビー社の顧客情報が何者かにハッキングされて流出、それが南ドイツ新聞社を経由してICIJ(国際調査ジャーナリスト連合)に渡り、世界のメディア各社が共有して発表されたものだ。2016年5月には同様の経過でパナマ文書が発表され世界に衝撃を与えた。このパナマ文書を調査し実態を暴いた記者の一人、ダフネ・カルアナガリチアさんが、マルタで今年10月に何者かによって自動車ごと爆殺されている。この種の文書は「闇が深く」、調査報道に関わるジャーナリストは命がけで事実を暴いてくれている。
パラダイス文書にはエリザベス女王や鳩山元首相の名前などが出てきたが、最も追求すべきなのはアメリカのロス商務長官だろう。ロス氏はトランプ政権の中枢にいながら、彼の所有する海運会社ナビゲーターとロシアの石油化学企業のシブールがつながっていて、巨額の利益を隠して租税回避していた。そしてこの石油会社シブールは、あのプーチン大統領の娘婿シャマロフ氏が役員を務めているというのだ。
2014年2月のウクライナ危機の時に、ロシアのプーチン大統領は武力でクリミア半島を奪い取った。その後、国際社会はロシアに経済制裁を課していた。いわば各国に対して「ロシアとの取引は控えましょう」と訴えるべき商務長官が、まさにそのロシアとの取引で巨利を得ていたのだ。トランプ大統領自身のロシア疑惑と合わせれば、政権が飛ぶくらいの衝撃になるはず。しかしその後、このパラダイス文書はあまり報道されず、疑惑は尻すぼみだ。どこか日本の「モリカケ疑惑」と同じニオイがする。
パラダイス文書ではアップルやナイキという米国を代表する企業の名前も出てきた。大資産家、大企業は大手マスコミのスポンサーである。先日はあの加計学園の広告が読売新聞に掲載された。パナマ文書にはユニクロやセコムの名前も出ていた。テレビには今もアップルやユニクロのCMが氾濫している。このCMがなくなればテレビ業界はますます苦境に陥るだろう。肝心のメディアが追求しなければ世間は忘れる。アッキーや加計理事長を証人喚問せよ、数ヶ月前までの大きな世論が、いつの間にか消えて無くなったようになって、今やテレビは横綱日馬富士がビール瓶で殴ったか殴らなかったか、がトップニュースである。
そしてスキャンダルから守られて、小選挙区制度による「虚構の数字」で圧勝したかのように報道されている安倍首相が、やはり疑惑の人物トランプ大統領とゴルフをする。
仲睦まじく語り合っている姿だけが報道されて、その陰で米国製の馬鹿高い兵器を言い値で買わされていく。兵器が売れれば、米国の軍産複合体やそれに付随する日本の大企業は、トランプ&安倍スキャンダルを追いかけない「羊のようなテレビ」を優遇するだろう。
日本で儲けたお金を、大富豪、大企業たちはケイマン諸島などに移転させる。その金額は2011年で約55兆円、13年では63兆円に膨らみ、昨年は約75兆円に上った、と報道されている。ちなみに63兆円で計算してみよう。日本の法人税率が約35%なので、これら63兆円が「逃げずに正々堂々と」日本で払っていれば、約22兆円になる。この22兆円というのはどんな数字か?
2014年の所得税は約14兆円強、消費税は8%に引き上げて約15兆円、そして法人税はわずか10兆円、その他合計しても約54兆円の歳入に過ぎない。
もし大富豪や大企業がパナマやバミューダなどに逃げないで、日本で払っていれば…。
消費税ゼロ%でも、今より豊かな福祉や教育が実現していた、ということだ。
これはこの社会の根幹に関わることである。税金というのは富の再分配、つまりみんながこの社会を公平に成立させ、より豊かにしていくためのシステムである。
この根幹が「卑怯な税逃れ」で崩れているのだ。だからパナマ文書、パラダイス文書で明らかになった真実を、もっと調査して、今後はこのような道義的社会的不正を許さないシステムに変えていかないとダメなのだ。「抜け穴を塞げ!」アメリカのサンダース氏が文書の開示を受けて、このように主張した。彼はアメリカの格差社会を批判し、1%対99%の戦いを挑んだ議員である。日本もアメリカ同様、貧困化が進み、例えば大学まで進学して有利子の奨学金を借り続けると、卒業時に数百万円の負債を抱えてしまう。その上で就職に失敗したら、奨学金破産に追い込まれる。そんな若者が増えていく一方で、マン島に自家用ジェット機やヨットのリースビジネス、と称して巨額の資産が脱税されていくのだ。これほど不公平な話はない。
トランプとステーキを食べた、帽子に名前を書いて交換した、娘は元トップモデルだった…。劣化した政治家と劣化したメディアが、この国をダメにしている。パナマ文書とパラダイス文書によって暴かれたスキャンダルは、決して忘れてはならない。

元外務省の天木直人さんが指摘されているが、今回のトランプ訪日は「異常で、日本の主権を蹂躙するような」形で始まったということである。羽田ではなく横田基地にやって来たということは、日本の玄関は在日米軍基地だった、ということ。他の国のトップは羽田か成田からやってくる。つまり、日米安保と地位協定が上にあり、日本はアメリカの属国であるという意思表示になる。
以下天木氏のコメント。
「私が言いたかった事は、日米安保条約と、その具体的取り決めである日米地位協定が治外法権的な不平等条約である事は、日本の外務省も米国の国務省も知っている。だからこそ、これまでの現職米国大統領の来日に際しては、日米外交当局はことさら配慮して、横田基地ではなく羽田空港に降り立つことに気を使って来た。ところが、トランプと安倍首相の間には、その配慮がなかったということだ。
日本占領を当たり前のように考えている米国軍幹部とそれに従うトランプが、日本の国民感情を逆なでする誤りをおかそうとしたのに対して、トランプの機嫌を損ねたくなかった安倍首相が、その誤りを容認し、日本の主権侵害を公然と認める愚を犯した結果、はじめて現職米大統領が横田基地に降り立ち、そのままゴルフ場に直行するという前代未聞の事が起きたのだ。 その一部始終をNHKは何の問題意識もなく、公共放送で流し続けたのだ。これは、トランプ・安倍の、いわば、日米同盟という名の日米属国関係を世界にさらすオウンゴールであった。それにもかかわらず、野党はこの敵失を見逃した。 一切そのことを追及しようとしなかった。これでは国民は気づかないはずだ。 おりからきょうの新聞で、米国とトルコがビザ発給を再開するというニュースが流されていた。米国とトルコは、昨年トルコで起きたクーデター未遂事件の捜査で、トルコ政府が米総領事館の職員を逮捕した事がきっかけで、ビザ発給をお互いに停止していたのだ。」

以上が天木氏のコメント(一部)である。

補足したいのは、昨年のトルコクーデターの詳細について。昨年8月、クーデター直後に私はトルコの首都アンカラに入った。アンカラの国会議事堂はF15戦闘機によって空爆され、トルコのエルドアン首相が宿泊するホテルは、やはり戦闘機から空爆を受けていた。エルドアンは避暑地のホテルから命からがら逃げ出して暗殺は免れていたが、あと15分脱出が遅れたら、殺されていただろう。このクーデターの首謀者はギュレン師というイスラム指導者で、ギュレン師は米国に亡命しているのだ。ギュレンのクーデターの背後には米国がいると考えられている。細かい状況説明は私の昨年のツイッターを参照して欲しいのだが、米国とトルコは一触即発の状態。しかしトルコは堂々と米国と渡り合っている。私はエルドアンを絶賛するわけではない。むしろクーデター後、エルドアンは反対者を弾圧し、まったく窮屈な国にしているのがエルドアンだ。私は昨年11月になぜかイスタンブールで強制送還され、独裁化するエルドアンには煮え湯を飲まされた経験を持つ。しかし、独裁化するエルドアンでさえも、対等に米国と渡り合おうとしている。いい意味でも悪い意味でもエルドアンは「一本筋が通っている」と言える。アベはどうか?ふにゃふにゃである。本物の右翼なら「横田基地を使うな!」というだろう。ゴルフをしてバンカーで転んでいる(笑)場合ではないのだ。「戦後レジームからの脱却」ならば、対米従属はダメ。でもアベこそが「対米従属の権化」である。この国はねじれている。選挙でもねじれた。世論調査は「安倍政権の継続を望まない」。なのに結果は「自公の圧勝」。よく「こんな国民にこんな首相」と言われる。トランプとゴルフをして、バンカーですってんころりと転がりながら愛想笑いをする首相。ジャイアン(米国)に媚びへつらうスネ夫(アベ)。日本はここまで劣化したのだ。トルコのエルドアンは民主主義を理解しないが「米国に抵抗する」独裁者。アベ首相は民主主義を理解しないで、なおかつ「米国に従属する独裁者」である。最悪だ。

このアーカイブについて

このページには、nishitani2017年11月に書いたブログ記事が含まれています。

前のアーカイブはnishitani: 2017年10月です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。

nishitani: 月別アーカイブ

Powered by Movable Type 4.01