nishitani: 2018年5月アーカイブ

昨年京都新聞に書いたコラムです。エルサレムは街全体が大きな観光地のようで、キリスト教徒の黒人や韓国人の方々が観光バスで次から次へとやってきてました。今この街をめぐってまたまた争いが生じて多数の死者が出ています。トランプ大統領の責任ですね。日米のトップを早く変えないとダメですね。


2003年3月のイラク戦争から今年で15年が経過する。バグダッド空港は当時米軍が占領していたので、イラク入りするには隣国ヨルダンの首都アンマンから陸路で入るしかなかった。04年に2度目のイラク取材を敢行した。無事バグダッド入りした直後に日本人誘拐事件が起きる。陸路で誘拐されたのだ。原因は米軍のファルージャ大虐殺。「自衛隊を撤退させろ、さもなくば人質を焼き殺す」。衝撃的な映像が世界を駆け巡る。さて、どうやってアンマンへ帰る?ヨルダン人通訳のハリルが商店街へ買い出しに。私たちの作戦は「女装」。ニカブと呼ばれる全身黒ずくめの衣装を着て、タクシーをぶっ飛ばす。無事アンマンにたどり着き、夜空に輝くネオンサインを見て「ここには米軍の戦車も武装勢力もいない。電気が通ってるし水も出る!普通っていいなー」。しみじみと「平和であること」に感謝したものだ。
日本への帰国便が飛ぶのは数日後。「ハリル、一緒にイスラエルに行こうよ」。アンマンからエルサレムまでは直線距離でわずか70キロほど。しかしヨルダン人にとっては、はるか彼方。「ムスリムなら誰でもエルサレムに憧れるよ。しかし俺たちは訪問できない」。ハリルが悔しそうにつぶやく。ヨルダンの若者にはビザが下りないのだ。聖地アルアクサモスクは預言者ムハンマドが昇天したところ。「俺が生きてる間は無理だろうな」。ハリルを残し、乗り合いバスで国境を目指す。バスは坂道を転げ落ちるように下っていく。アンマンは標高1千m、ヨルダン川が注ぐ死海はマイナス600m。ここは大地溝帯、つまり地球の裂け目の起点部分。アラビア半島とアフリカ大陸が分裂して、そこに海水が流れ込んだのが紅海。その裂け目に沿って流れるヨルダン川流域は地底なので、年中暖かく農作物が豊富。だからここで文明が発達してユダヤ、キリスト、イスラムの三大宗教が生まれた、というのが私の仮説だ。
「アナザーペーパー!(別の紙)」。国境の係官に向かって叫ぶ。パスポート本体にイスラエルのスタンプを押されると、周辺アラブ国に入れなくなる。別の紙に押してもらい、ホチキスで止める。出国の際にその紙を外せば、パスポートは汚れない。イスラエルとアラブ諸国の対立は旅行者にまで及ぶ。
エルサレムに到着。まずはユダヤの聖地「嘆きの壁」へ。壁からふと外を見上げるとアルアクサモスクが見える。イエス・キリストが十字架を担いで登ったゴルゴタの丘には聖墳墓教会。イエスが歩いた道には処刑直後にオリーブの木が植えられたらしく、その樹齢は2千年だ。3大宗教の聖地は想像以上に近接し「一度でいいからここにお参りしたい」という世界からの観光客で一杯だった。
「エルサレムはイスラエルの首都だ」。トランプ大統領の一方的な発言は、この地に新たな紛争の種をまいた。エルサレムには東西を分ける分離壁がそびえている。トランプ発言は人々の心の中に新たな分離壁を作る。壁ではなく橋をかけるべきなのに。そんなトランプさんと仲良くゴルフして池の鯉に餌をやる安倍首相の映像が世界に流れた。ちょっと恥ずかしいな。

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