毎日新聞2004イラクレポート(2)

掲載日:2005年10月11日

全身黒で現れたマフディ軍(サドル師軍)民兵

モクタダサダルのレジスタンス、中央黒服がリーダー
モクタダサダルのレジスタンス、中央黒服がリーダー

その「黒服の男」は約束どおりバグダッド放射線病院の正門前に立っていた。ノール・アハマド27歳。アメリカに対して最も強硬な姿勢を示すサドル師のゲリラ兵で、4月に入って断続的に続く銃撃戦を戦っている。戦闘があったのはバグダッド郊外のアル・サドル市。住民のほとんどが貧しいシーア派で反米感情が強く、ファルージャに続く大激戦地だ。「4月7日の戦闘で、サドル市だけで約250人のイラク人が殺された。われわれは50人程度の米兵を殺した。アパッチヘリ2台、戦車5台…」。おいおい、いきなりディープな話やないかい。黒はサドル師のシンボルカラー、全身黒服を着ているだけで、情け容赦なく米軍は撃ってくる。

「バグダッド市内で黒を着るのは勇気がいるだろう?ここは米軍の車列がよく通るんだよ」
「サドル師の指示は絶対だ。黒服を着ろと言われれば着る。全然怖くないよ。サドル師のために闘って死ねば天国にいけるからね」
「日本人3人が拉致されたが、どう思うか」
「俺たちは誘拐などしない。俺たちはテロリストではなく解放軍だ。日本は同じアジア人で友人だと思っている。しかし今、軍隊を出してアメリカに協力していることは不満だ。アメリカは平和の敵だ。日本もヒロシマやナガサキでたくさんの人々が殺されたじゃないか。今のイラクも一緒だ。どうか外へ出て戦争反対のデモをしてくれ。イラクを助けてほしい。私たちのメッセージをぜひ、日本に帰って伝えてほしい」。

14852、14852…

戦車砲を打ち込まれた家
戦車砲を打ち込まれた家

ノールは米軍が破壊した家や殺された家族に会わせてくれると言う。どうしよう…。「ベリーベリーデンジャラス(とても危険だ)」と通訳のワリード。「日本人は誘拐しない」という彼の言葉を信じたかった。と同時に、私が「4人目」になったら…。「行こうワリード、あいつらに賭けてみよう」「通訳料の他に危険手当を要求するぜ(笑)」。

前を行く白のベンツを追いかける。「14852、14852」ワリードとベンツのナンバーを記憶する。どちらかがつかまれば、すぐに警察に駆け込まねばならない。30分ほど高速道路を走り、やがてサドル市の入り口に到着。前を行くベンツが止まり、肩から機関銃を下げた部下の一人がこちらの車に乗り込んでくる。サドル市は危険なので、護衛がついたのだ。フセイン時代、シーア派のこの街はかなりの弾圧を受けており、フセインの拷問にかかった人多数。道路や下水は整備されておらず、街には異臭が漂っている。道端に捨てられた生ごみを羊が食べている。「フセインはわざとこの街のインフラを整備しなかった」とワリード。そんなフセインを打倒してくれたのだから、本来なら「アメリカ万歳」を叫ぶはずのこの街が、今やアメリカの占領に反発する拠点の町になっている。「さあ着いた。まずはこの洋品店を見てくれ」。ノーラが指差したその洋品店は…。