毎日新聞2004イラクレポート(5)

掲載日:2005年10月11日

悲惨!劣化ウラン弾を糾弾する

白血病の子ども
白血病の子ども

バグダッド子ども病院には小児がん専門病棟がある。約50人の子どもが入院していて、毎週2~3人が亡くなっていく。湾岸戦争そして今回のイラク戦争で、アメリカは大量の劣化ウラン弾を使用した。戦場で兵士だけが死んでいくのなら、まだ話の筋は通る。しかし現実には戦争が終了しても、イラクに残された放射能によって、兵士の何十倍、何百倍もの「普通の人々」が苦しみながら死んでいく。特に何の罪もない子どもたちが。

昨年11月にここを訪れた時、右足に野球ボール大の腫瘍を持つ男の子、ムスタファ君(4歳)がいた。「ああ、あの子は3月に亡くなったよ」。やはりダメだったか…。ある程度予想はしていたが、こうして現実を突きつけられるとやはりショックだ。

劣化ウラン弾でリンパ腺ガンに
劣化ウラン弾でリンパ腺ガンに

リンパ腺がんでお腹がパンパンにふくれ上がった女の子がいる。アンマドちゃん(10歳)がガンを発症したのはわずか1ヶ月前。「よくてあと半年くらいだろう」と担当医師。この病院には薬が不足しており、がん末期の少女にさえ、抗がん剤などの薬は処方されないことが多い。ナースレちゃん(7歳)はガリガリにやせている。白血病末期だ。ナジャフという劣化ウラン弾を大量に撃たれた地域の出身。日本からの絵本をあげて写真を撮ってあげるとエヘヘと微笑んでくれる。やせこけたその笑顔は、わずか7歳にして老婆のようである。ムーサ君(11歳)は比較的元気だが、3週間前から車椅子の生活だ。1年前から白血病と闘っているが、粗悪な薬だったのか、副作用で歩けなくなってしまったのだ。「薬の量も足らないし、質の問題もある。日本製の良質な抗がん剤がほしい」。医師の言葉にうなずきながら、この治安の悪いイラクに、どうすれば薬などの人道支援物資を届けることができるかについて考える。国連や赤十字などが現地入りしていない中で、支援活動ができるのはNGOしかない。イラクには今、何人もの「高遠さん」が必要なのだ。

クラスターもまた「悪魔の兵器」だ

クラスター爆弾不発弾で右目を失った子ども
クラスター爆弾不発弾で右目を失った子ども

核・放射線病院、外来患者の列にムハンマド君(5歳)がいた。昨年4月11日、自宅近くの広場で遊んでいた彼は「不思議なもの」を見つけた。転がしたり、突いたりして遊んでいるうちに「それ」が爆発。破片が右目に刺さり彼は片目を失った。クラスター爆弾の不発弾は、子どもにとってはおもちゃに見えたりする。「クラスターは危険。触ってはいけない」という教育を行う一方、早急に不発弾除去を行わないと、今後彼のような犠牲者は増えていく。インタビューを続けていくうちにふと疑問が浮かぶ。「この子はどうしてこの病院に来ているのだ?」。ここはがん患者専門の病院、失った右目の治療なら別の場所へ行かねばならない。「実はこの子の頭に腫瘍ができています。今日はその治療です」と父親。ああ、この子はクラスター爆弾、劣化ウラン弾という2種類の「悪魔の兵器」の犠牲者なのだ。アメリカという国はひどいことをした。イラク戦争開始直後、「テレビゲームのような」空爆の様子を見られた方も多いだろう。「撃たれた側」のイラクでは、阿鼻叫喚の悲劇が繰り返され、そして戦争が終わった今も現在進行形で続いている。

サマワに自衛隊が駐留して、もう5ヶ月になる。サマワも劣化ウラン弾が使用された地域だ。このまま1年、2年と駐留が続くと自衛隊員も被爆するだろう。その影響は数年後、生まれてくる子どもに出るのかもしれない。そんな被爆隊員たちが国を相手取り訴訟をするかもしれない。しかし派遣を決定した最高責任者、小泉純一郎氏は、もうその時首相ではないだろう。数年後、「何であんな戦争に協力したのだろう」と後悔しても後の祭りなのかもしれない。