イランとアメリカ、そしてトランプの自己都合

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アメリカとイランが一触即発の状態になっている。これはオバマ前政権が結んだイランとの核合意についてトランプ大統領が一方的に離脱し、イランに制裁を加えることに対して、イランが反発した結果だ。この間ペルシャ湾を航行する日本のタンカーに何者かが攻撃を加えたり、イギリスのタンカーがイラン革命防衛隊に拿捕されたりするなど、緊張が高まる一方だ。そしてアメリカは日本など同盟国に「有志連合」に加わることを要請し、日本は参加するかどうかを検討する段階にまで至っている。ここでは、なぜこのような事態に陥ったのか、私なりに分析してみたい。

イランは中東の大国であるが、アラブではなくペルシャである。圧倒的にイスラム教徒が多いことは、他のアラブ諸国と同じだが、イランの場合、そのほとんどがシーア派である。他のアラブ諸国、例えばサウジやエジプト、リビアなどはほとんどがスンニ派の国で、その人口比率は1:9。そう世界的に見ればスンニ派が圧倒的多数なのである。

1970年代までイランは西側陣営の親米・親イスラエル国家で、アメリカはイランの核開発を認めていたほどであった。イランのパーレビー国王はアメリカの石油資本と結んで富を独占していたが、この体制が終焉を迎える。パーレビー国王への国民の不満とイスラム抵抗運動が重なり、1979年2月にイラン革命を実現させてしまったのだ。そして革命に続く11月には、イランの青年たちがアメリカ大使館を占拠して、職員や海兵隊員を人質にしてしまう。この一連の出来事が決定的な転機となり、イランは反米国家とみなされ、現在に至っている。

以上を基礎知識として、今回、なぜトランプ大統領が「わざわざ緊張を高める行為」を繰り返しているのか、分析してみたい。

結論から言うと、「すべては自分の大統領選挙のため」だと考える。

今回の「イラン危機」の前に、トランプ大統領は2018年8月に米国大使館をエルサレムに移転させ、首都として認定している。エルサレムはユダヤ教、キリスト教、イスラム教の聖地で、国連の「エルサレムを首都としない」という決議に違反し、アラブ諸国を敵に回す結果となった(イスラエルは大喜びした)。レーガンやブッシュでさえもできなかった「禁じ手」をなぜ、このタイミングで行ったのか?

アメリカに住むユダヤ人は約716万人。アメリカの人口約3億2千万人と比べるとほんの少し。この人たちを喜ばせても選挙には勝てない。実はこの決定に喜んだのは、キリスト教福音派と呼ばれる人たち。キリスト教が多数を占めるアメリカで、この福音派は人口の4分の1を占めるといわれる。つまり約8千万人もの巨大勢力。このキリスト教福音派はイエス・キリストの復活を信じている。

私はエルサレムを2度訪問したことがある。旧市街の中心に聖墳墓教会があって、ここはイエスが処刑されたゴルゴタの丘の跡地に建てられたもの。聖墳墓教会から伸びる小道にはオリーブの木が植えられていて、その樹齢は2千年。「処刑の年に植えたんか」。通訳の解説に頷きながら、歴史の重みを感じた。ユダヤ教の聖地「嘆きの壁」にも行ってみた。なんと嘆きの壁の向こう側にイスラムの聖地、岩のドームの黄金に輝く丸屋根が見える。「狭いところに聖地が密集!」。だからこそ「この地は特別な場所、首都にしてはならない」と国連が決めていたわけだ。イエスが復活するとすれば、その場所は間違いなくエルサレムだ。つまり福音派が望むのは、「エルサレムを手に入れること」。

つまり「トランプこそ、福音派の味方」となり、彼らは岩盤支持層になるだろう。

イラン危機も同じ構図。イスラエルにとって最も警戒すべき国の一つがイランだ。イランはエルサレムに届く弾道ミサイルを持っている。このイランを経済制裁で叩いておけば安心。確かにイランの核開発は絶対にさせてはいけない。核兵器はいかなるものも認めるべきではない。ならば、イスラエルの核はどうなる?アメリカはもちろん、IAEAも国連もイランや北朝鮮の核で大騒ぎする一方、数百発は持っているであろう、イスラエルの核には沈黙を貫く。これはダブルスタンダードで、ICANが提案してくれた「すべての核兵器を禁止する」という条約こそ、批准しなければならない。(被爆国日本は会議に欠席!そして条約に反対!)

そして忘れてはならないのが「アメリカの軍産複合体」。現在のイランに真っ向から対立する国、それはサウジアラビアだ。長引くイエメン内戦は北部のフーシー勢力(シーア派)をイランが支援し、南部出身のハーディー大統領(スンニ派)をサウジが支援するという、代理戦争になっている。このサウジアラビアはイスラムの王様が支配する独裁国家で、なんとアメリカ製武器の世界最大の輸入国なのだ。(2014年インドを抜いて世界一)このサウジを実質的に支配しているのがサルマン皇太子。2018年10月にサウジのカショギ記者がトルコで暗殺された。これはサルマン皇太子の命令だったと言われている。しかしトランプ大統領はサルマン皇太子を非難しなかった。なんと先日のG20にも皇太子がやってきたが、安倍首相もこの問題に触れなかった。それは皇太子がアメリカ製の武器を爆買いしてくれるから、憎いイランの天敵だから、だろう。

アメリカ経済は武器製造と金融で回っている。武器が沢山売れれば、経済は順調に回るだろうし、失業も解消される。つまり「虐げられてきた白人貧困労働者たち」も岩盤支持層にとどまってくれる。今、トランプ大統領はかつてソマリア難民だったイルハン・オマル下院議員やプエルトルコ移民のオカシオ・コルテス下院議員など4名の非白人女性議員に対し、「嫌なら国に帰れ」と叫んでいる。これは明らかな人種差別発言で、本来なら弾劾に値する。しかしこのトンデモ発言に対して、一部白人支持者たちが快哉を上げているという。

人々を分断し、宗教や民族の対立を煽り、そして戦争の脅威を煽ってでも選挙に勝とうとするトランプ大統領。

創価学会、つまり宗教票を上乗せし、北朝鮮や韓国との対立を煽って支持率を上げようとする。演説会では多様な意見に耳を傾けず、自分を批判する人たちを「こんな人たち」と罵る。トランプさんとこの国の首相はよく似ているのである。

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このページは、nishitaniが2019年7月31日 17:36に書いた記事です。

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